アフターコロナで着実に忍び寄る新興国の通貨不安

欧米を中心に都市封鎖(ロックダウン)が段階的に解除されるなど、世界ではアフターコロナを見据えた動きが徐々に広まっている。アフターコロナの出口の先にあるものは、必ずしもビフォーコロナの状態ではないのだろう。とはいえ、これまで停滞していたヒトやモノ、そしてカネの流れが再び動き始めることは確実だ。

その過程で、中東の地政学リスクなど、コロナ禍でさほど重視されていなかった問題が再燃すると警戒される。そうしたトピックの1つに、この間に着実に進んでいた新興国の通貨安の問題がある。グラフは主要通貨の対ドル相場の年初来騰落率を見たものだが、ブラジルの通貨レアルを筆頭に新興国の通貨が軒並み下落していることが確認できる。

対ドル年初来騰落率
(注)5月8日時点で作成(出所)Bloomberg

ドル円レートを見ると、3月9日に終値で102.3円まで急騰したが、その後は100円台後半のボックス圏で推移しており、安定している。そのため為替市場は一見安定しているように思えるが、クロス円(ドル以外の外貨と日本円のペア)で評価すると、新興国通貨の対ドルでの下落を受けて、円高が着実に進んでいることが分かる。

輸出にしろ投資にしろ、新興国ビジネスの収益は基本的に現地通貨で回収される。そのため、新興国ビジネスに従事する日本企業や金融機関にとって、新興国の通貨安は大きな関心事だ。ドル円レートばかりではなくクロス円レート、ひいては円の総合的な実力を図る実効為替レートの動きを見ていくことが重要となる。