人間の脳は「変化」を拒絶するようにできている

ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマンは、心理学者エイモス・トベルスキーとの共同研究で「人間は変化を受け入れることで大きな利益が見込める場合でも、現状を維持したがる」という現状維持バイアスの存在を発見しました。

変化にはリスクやストレスなどの「不安」がつきまといます。また、それまでに積み上げてきた知識や技能が役に立たなくなるという「損失」も伴います。現状維持バイアスとは、簡単に言えば、変化に伴うリスクや損失を避け、身を守ろうとする自己防衛本能です。多くの人は、この脳の働きにより、現状を維持する選択を無意識に行っているわけです。

今、私たちは大きな環境の変化に直面しています。この変化を乗り越え、飛躍していくためには、現状維持バイアスを打破し、勇気を持って新しい世界に適応していかければなりません。

そのために、今、親がすべきことは、家族の絆を強めることです。家族がお互いをいたわり、尊重し、支え合うことで、家庭の「安心感」が大きくなります。安心感が大きくなれば相対的に不安が軽減されますから、現状維持バイアスの影響を受けにくくなるのです。

「自分は価値がない」と思いがちな日本人

親が子どもを尊重し、愛し、受け入れると「自分は価値ある存在だ」「自分は愛されている」「自分は受け入れられている」という自信が大きくなります。自信が大きくなれば、不安は小さくなりますから、心が明るくなり、思考が前向きになり、行動が積極的になっていくのです。

国立青少年教育振興機構が、日本、韓国、中国、米国の高校生を対象に2018年に行った意識調査があります。この中で、「私は価値のある人間である」という質問に「YES」と答えた割合は、日本人は44.9%でした(韓国は83.7%、中国は80.2%、米国は83.7%)。

日本人は謙遜しますから多少色をつける必要がありますが、「自分は価値がある」と答えた高校生が44.9%というのは低すぎる数字です。裏返せば、「自分に価値がない」と感じている高校生が半数以上いるということです。