また、モニター越しに授業に参加する生徒の集中力を切らさないためにはどうするべきか。我々は2005年に文部科学省の認可を受けて以来、長年にわたって実験を重ねてきた。パワーポイントや手書きで作った資料を事前に用意して、それらを使いながら説明するといった工夫は当然のこと。BBTの授業では担当講師プラス、キャスターを1人置いてスタジオで丁寧にコンテンツを作っている。

キャスターは視聴者代表の立場で「それはどういうことですか?」と問い掛けたり(質問はオンラインで受け付けている)、「こういうことなんですね」などと話をとりまとめて、講師との掛け合いで授業が進行していく。むさ苦しい中年講師が1人でボソボソと講義していたら、授業に抑揚がつかない。授業のコンテンツはもちろん、目を引きつける工夫や仕掛けが必要なのだ。

BBTでは「AirCampus」という遠隔教育システムを独自開発して改良を重ねてきた。パソコン、スマホ、タブレット端末に対応していて、ブロードバンド環境さえあれば世界中どこからでも授業が受けられる。ライブの講義に加えてアーカイブのコンテンツは1万時間以上あるから、自分の好きなタイミングで学習できる。おかげで今やBBTの受講生の7割が通勤時間帯などにスマホで授業を受けている。

オンライン研修はテレワークとの相性もいい

AirCampusは講義を視聴しているかどうか出席確認(認証)する機能やディスカッション(クラス討論)機能を備えている。BBTでは1時間の講義の後、AirCampusを通じてクラスメート同士で活発なディスカッションが行われる。卒業生が「ラーニングアドバイザー」として参加して議論の交通整理をしながら、次の講義までの1週間、意見を戦わせるのだ。サイバー社会で発言しない人は存在しないに等しい。我々はディスカッションにおける貢献度(発言数など)もチェックして成績に反映させている。

オンライン授業はインタラクティブ(対話、双方向)性がきわめて重要で、先生の授業ばかりではなく、世界中にいる(性別はもとより年齢、業種、地理的な場所が異なる)同級生との議論から学ぶことが実に多い。

このように我々はサイバー教育にどこよりも早くから取り組み、経験と実績を積み重ねてきたのだが、難攻不落だったのが企業の集合研修だった。22年前にBBTを設立した当時から、「グローバル化で世界中にスタッフが散らばっている時代に集合研修はありえない。研修をオンライン化すべし」ということで売り込んだが、日本企業の集合研修文化は岩盤規制並みに手強かった。人事部の教育係は皆を目の前に集めてやらないと自分たちの功績・実績にならないと信じ込んでいたからだ。

ところが新型コロナウイルスの感染防止対策が火急の用になってから、集合研修は感染リスクが高い濃厚接触に当たると認識されたらしく、BBTに企業から問い合わせと注文が殺到している。

新型コロナの影響で企業研修の機会が失われることは、日本経済にとって人材面でも大きな打撃になりかねない。オンライン研修はテレワークとの相性もいい。もちろん定期的な学び直しである“リカレント教育”とも相性がいい。企業社会が率先してオンライン化を進めることが、障害の多い教育現場のオンライン化を促すことにもつながると思う。

(構成=小川 剛)
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