「建学の精神である『知のネットワークは人間の能力を無限に伸ばす』ことを信じ、これからも努力し続け、世界で活躍してください」と私から激励のメッセージを贈り、最後はZoomで映った皆で集合写真を撮って世界初のアバター卒業式は無事終わった。NHKなどのメディアが取材にきていたから、テレビで式の様子を見た人もいるかもしれない。実はBBCやNYポストなど世界中のメディアも注目して報道してくれた。卒業生からは「感動的だった」という声を随分もらった。

また、プレジデント誌と一緒にやっている大前経営塾の卒塾式では、サイバー参加者に対して日本初、修了証書をブロックチェーンで当人のスマホに授与した。ブロックチェーン技術で保護され、オンライン上でデジタル化された修了証書は、従来のオンライン証書に比べてはるかに偽造や改竄のリスクが低くなる。将来は履歴書に添付して“箔をつける”ことも可能だ。

オンラインによる入学式も実施した。入学式の会場にいるのが学長の私を含めて4人の先生だけ。世界中に散らばっている入学生は全員オンラインで視聴参加。彼らの顔はモニター越しにこちらからも見られる。

入学生を代表して米ピッツバーグと香港、マレーシア在住の3人がリレー形式で決意表明をした。それぞれがBBTのロゴ入りパネルを持ち、あたかも隣から手渡されたような仕草をしてからパネルをかざし、本学を選んだ理由や自分の決意を語った。こちらも感動的なセレモニーになった。

なぜ休校要請でも、授業を継続できる学校があるのか

安倍晋三首相の休校要請を受けて、20年3月2日から全国の小中高校、特別支援学校の大部分は一斉休校に入った。20年4月の新学期から再開できた学校は全国の約4割。20年4月7日の緊急事態宣言以降、対象になった7都府県ではほとんどの学校が休校を延長し、対象外の地域でも休校する学校が多くなっている。

私はアオバジャパン・インターナショナルスクールという3歳から19歳まで一貫教育を行う学校の運営にも携わっている。同校は国際バカロレア(IB。世界的な教育認証制度。グローバル人材を養成する独自の教育プログラムを提供している)の認定校であり、IBの厳しい基準をクリアした教授陣が揃っている。

安倍首相の休校要請に対して、我々は休校せずにオンライン対応で授業を継続することを決断した。生徒は自宅で朝8時30分から昼過ぎの1時半または3時頃までオンラインで授業に視聴参加。途中、トイレ休憩もある。先生方は学校や自宅で授業を行う。ITリテラシーにも秀でた人材ばかりだから、技術的な問題はまったくない。

とはいえ、対面授業と遠隔授業では勝手が違う。当初は戸惑いもあっただろう。毎週月曜日に約70人の教授全員がテレビ会議で集まってその週の指導方針を決めて、金曜日の会議で結果を報告、反省を交えながら情報を共有する。これを繰り返していくうちに教授たちの顔つきはみるみる明るくなって、今や自信に満ちた表情をしている。

長引く休校に教育現場や家庭では混乱や不安が広がっているが、アオバジャパン・インターナショナルスクールでは順調にカリキュラムを消化できている。生徒や保護者の反応も上々だ。20年6月中旬には今学期が終了し、夏休みを挟んで20年9月から新年度がスタートする。先が見通せない状況が続く中、このままの体制で20年6月まで突っ走ることになっても十分対応できるだろう。

大学教育もまた否が応でも変革を迫られている。全国の8割以上の大学が新学期からの授業を延期、対面授業からネットを活用したオンライン授業への切り替えを模索する大学が増えている。しかし、オンライン化するためには相応のインフラ、ITリテラシーなどの環境整備が必要で、時間もコストもかかる。