宗教は、神を信じない環境の方が伸張する

池上彰、佐藤優『宗教の現在地 資本主義、暴力、生命、国家』(角川新書)
池上彰、佐藤優『宗教の現在地 資本主義、暴力、生命、国家』(角川新書)

【佐藤】サイバネティックスはロシア語でキベルネチカと言います。モスクワ国立大学には「応用数学とサイバネティックス学部」(現・計算数学・サイバネティックス学部)という独立した学部などがあり、AI研究に特化している学科もありました。そういう時期を経ているので、ロシアの人々は、軍事ロボットなどで人工頭脳に向かう技術を使うことには関心がありますが、シンギュラリティ(※)というようなことに対しては鈍感なように思います。逆に「これはかつて聞いていた無神論の歌、唯物論の歌なのだ」という意識が強く、「シンギュラリティは来ない」と思うようです。

※AI(人工知能)の能力が人類を超えるとされる概念

ソ連体制下では、心というものは物質的なものの一種の模写、反映だとされながら、かなり実体的な心の感覚がロシア人には強かったわけです。だから無神論的な環境に置かれたほうが、宗教はむしろ磨かれるような感じがします。

【池上】なるほど、逆説的ですね。

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