かつての不採算部門に芽生えたプライド
売りものにしていなかったもの、売上ゼロが会社を支えるレベルの売上を叩き出したことの社内的なインパクトはあった。
部門長会議で「廃止」を訴えていたはずの69歳上層部は「廃止の決定を下さなかった」と謎アッピールをしている。文句をいうだけで何もしなかったことがご自分の評価につながると考えているらしい。
当該何もしていない69歳上層部から「キミはメールを送っただけじゃないか」と詰問されたのも意味不明だ。
主役は僕ではなく、実際に動いてくれた衛生部門だ。彼らの労をねぎらおうとドリンクの差し入れに行ったとき、「ここまで忙しくなるとは……前のほうが良かったです」と笑顔で恨みごとを言われた。
笑っていたので、当初は冗談と受け取っていたけれども、違った。
僕は疲れから貼りついたようになった表情を初めて見た。フル稼働。フル予約。かぎられた人員と資源。彼らは前とは面構えがちがっていた。会社を支えているのは俺たちというプライドが確かにそこにはあった。
絶望する前にやることがある
売っていないものを売るという発想で、ウチの会社はなんとかサバイブをすることができそうだ。
今、多くの企業が苦しい状況にある。
特にウチのような中小企業は、本業しかやっていないところが多いはずだ。本業の売上が激減したら。ゼロになったら。絶望してしまう。
だがちょっと待ってほしい。
絶望する前に、先入観を排除して、これまでまったくやっていないことをやってみる。ヤケクソ、ダメモトでやれば怖いものはないはずだ。新型コロナより怖いものはない。
ピンチのときこそ、ビジネスの原点に立ち戻って、普段付き合いのある相手、顧客や見込み客が何を求めているか、相手を見ることが大事になる。
そして、今できることを、先入観や既存の価値観にとらわれずに、今やっていることの延長ではない別のものまで拡張して考えてみる。見ることは変えずに、考え方と手を変えていく。
そのうえで、もっとも大事なものは、周りにいる人たちの力になりたい、助けたいというパッションだ。
僕はこのあたりにコロナ禍を生き残るヒントはあると考えている。世の中が変わったら、それに対応して考え方を変えればいい。「何かできること」を制限しない柔軟さをもって立ち向かおう。苦しいけれど今こそ。
現場からは以上です。