ニュースを見て思い浮かんだのは不採算部門の存在

きっかけはニュースだった。

「どこどこの施設でコロナ感染が発覚しました。先ほど保健所の職員が立ち入り、現在は消毒作業が行われている」というありふれたニュースを見ていて、ふと、僕は気づいた。

確か消毒作業員が現場に入るまえに来ていたユニフォームだったと思う。そこにはキャッチ―なロゴと電話番号があった。公的な施設のはずだが、消毒をしているのは、明らかに民間の業者だったのだ。

「公的な施設は、保健所が消毒を行っている」という先入観があったので驚いてしまった。

その瞬間、僕はウチの会社にも衛生部門があったことに気づいた。以前、部門長クラスの会議で売上を上げていない部署として真っ先に名前があがっていたのだ。仕方ない。衛生部門は、飲食部門のおこぼれで社内的に仕事をもらっている部署で、外へむかって営業をかけていなかった。

店舗を開業する際、定期的に、清掃や消毒作業を社内部署から頼まれてやっている部署なのである。そもそも発足が本業のサポートからなので、売上を求められていなかったのだ。そして、売上がない事実を会議で上層部から突かれて「廃止」の声があがっていたのである。

食材が売れないなら代わりに……

僕は衛生部門の消毒除菌作業を売ることを発想した。

「食材が売れないなら代わりに」という安易な思い付き。暇をもてあましていたので衛生部門の長のもとへ行き、「コロナ関連の消毒作業ができるか」「作業にはどれだけの人員と時間とコストがかかるのか」確認を取り、その席で「1㎡当たり○○円」というパッケージを作った。

できる限りシンプルにした。営業マンの勘である。ヤケクソである。

衛生部門の者は僕の思い付きには懐疑的だったが、「少しでも役に立てれば」というふうに協力してくれた。こんなふうに商品は決まった。

次は販路。積極的に営業をかけることはできない状況であった。お金も人もかけられなかった。ホームページに掲載はしてけれど問い合わせは数件しかなかった。

これでは商売にはならない。

他の売り物を考えはじめたとき、取引先から「オタクは消毒とかやってないの?」という問い合わせを受けて気づいた。販路はすでにあった。気付いていなかっただけだった。僕はこれまで開発してきた見込み客リストからターゲットを絞り出して、メールを送った。