コロナショックで、企業ではテレワークやビジネスチャットの導入が加速し、紙の資料にさわる機会が減っている。ビジネス書作家の浅田すぐる氏は「デジタル化=善ではない。紙1枚の資料を作る機会がなくなることで、本質を捉える力が失われる」という——。

※本稿は、浅田すぐる『説明0秒! 一発OK! 驚異の「紙1枚!」プレゼン』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

タブレットとラップトップの両方を使う男性
写真=iStock.com/Poike
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職場から消えつつある「資料」の存在意義

私は社会人教育の専門家として、ビジネスコミュニケーションをおもなテーマに企業研修や講演活動を行っています。ここ5年ほどで感じるのは「働き方改革」の大号令のもと、ワークスタイルの多様化が進み、「会議」や「資料」のあり方も変わってきたということです。

その中身は、3つのキーワードであらわされます。

1つめは「コミュニケーションの一層のデジタル化」です。たとえば、受講者さんからこんな話を聞く機会が増えてきています。

「正直、今年はほとんどパソコンで資料を作りませんでした」
「最後にプリンターで資料を打ち出したのはいつだろうという感じです」
「全社員にタブレットが支給されて以降、資料をタブレット上で見ながら会議することが日常になりました」

要するに、「資料を作ること自体が減ってきている」、あるいは「そもそもまったく作らなくなった」というビジネスパーソンが増えているということです。

また、たとえ資料を作ったとしても、それをプリンターで出力しない。代わりに、各個人のパソコンやタブレット端末のディスプレイに資料を表示し、全員がそれを見ることで打ち合せを済ませてしまう。そんなケースが、職場によっては日常化しつつあるのです。