きちんと挨拶できる新入社員は10%

百貨店などでも同じで、支払いの際、クレジットカードを出せば必ず名前が入っている。その名前を読み取り「○○様、ありがとうございます」と言った時点で、その人だけへのサービスに変わる。ほんの少しのことでも、お客様が好感を持ってくれたら、そこから会話が生まれるかもしれない。コミュニケーションの少ない現代だからこそ、小さな心配りが大きなサービスの差となって表れると感じている。

お客様に満足感を与えるには、美しい言葉遣いも必要である。コミュニケーションが不足している現在、日本人でありながら、美しい日本語をきちんと話せない人が非常に多い。テレビでも乱れた日本語が飛び交っている。これは対面販売だったお菓子屋さんがコンビニにかわったり、電話よりもメールを使い、人と人とが直接会話をする機会が減少していることも影響しているだろう。私は常々、仕事に欠かせないのは2つのCであると考えてきた。それは「コミュニケーション」と「コンファメーション」である。コミュニケーションの基本は挨拶だ。

しかし、小学生を対象とした全国的な調査によると、いわゆる一般家庭で「おはよう」「おやすみなさい」「行ってまいります」「ただいま」といった基本的な挨拶が交わされているのは全体の60%程度しかなかったという。私が研修を担当している若い新入社員たちを見ていても、きちんと挨拶ができるのは全体の10%程度。つまり、現代社会では、挨拶がきちんとできるというだけで他人と差がつくのである。

コンファメーションには「確認」という意味がある以外に、コミュニケーション(挨拶)の対として、「返事」という意味もある。職場をちょっと離れるときには「行ってきます」「行ってらっしゃい」。休憩から戻ってくれば「ただいま戻りました」「お帰りなさい」。このような会話のキャッチボールこそが、仕事上のささいなミスを防止することにもつながる。ある米国の保険会社の調査によると、朝、「行ってらっしゃい」と家族から見送られた人のほうが突発事故にあう確率が低いという。きちんと見送られる人のほうが、その日1日の精神が落ち着くということの裏づけといえるのではないだろうか。

(中島 恵=構成)