危機管理上、最も拙い手である「戦力の逐次投入」

「迷走」「朝令暮改」「後手後手」……。あらゆるメディアでは、連日、安倍政権の新型コロナウイルス対応を酷評する見出しが躍っている。未曽有の国難に直面する中での安倍晋三首相の判断が、極めて心もとない。

一連の対応をみると、1つの「法則」に行き当たる。最初は小出しにして、足らないとなって追加対策を出したり、判断を変えたりするのだ。だから朝令暮改となり後手後手となる。「戦力の逐次投入」ともいえるこの戦術は、危機管理上、最も拙い手であることは歴史が証明している。

「もっと判断を早くしておけばよかった」という後悔の言葉

「1週間遅れることになりましたから、もっと判断を早くしておけばよかった。責任は私にあります。改めて国民の皆さまにおわびを申し上げたいと思います」

4月17日午後6時過ぎ。首相官邸で行われた記者会見で、安倍氏は謝罪の言葉を口にした。

衆院厚生労働委員会で答弁する安倍晋三首相=2020年4月17日、国会内
写真=時事通信フォト
衆院厚生労働委員会で答弁する安倍晋三首相=2020年4月17日、国会内

自身が任命した閣僚が不祥事を起こして辞任するようなときに「任命責任」を認めて謝罪するようなことは過去にもあったが、自身が判断を誤ったと認めるのは極めて珍しい。

それもそのはずである。政府・与党はコロナ問題で困窮した世帯に30万円を給付する案を盛り込んだ経済対策を決め、補正予算案を閣議決定もしている。これをいったん白紙に戻し、組み替えて「全国民に一律10万円」の配布を決めたのだ。いったん編成して閣議決定した予算案を組み替えるというのは前代未聞の事態。政府、特に財務省にとっては大失態だ。

この失態は、国民にしわ寄せが行く。最初から「一律10万円」を決めた場合と比べて、編成のやり直しによって国民の手に渡るのが遅れてしまうのだ。そのことが、プライドの高い安倍氏をして「もっと判断を早くしておけばよかった」という後悔の言葉を吐かせているのだ。