政府は「融資のしやすさ」をしきりに強調するが…
各自治体によっても対応が違いますが、多くの場合、家賃などの固定費に関しては補償を受けることができません。一方で政府は無利子・無担保・無保証の融資を推し進めています。それによる足元のキャッシュフローや運転資金の確保については、しきりに強調しています。
しかしながら、飲食店における運転資金の借入金額には限度があります。運転資金の借り入れは経費に算入できないため、借入金の返済は税引き後の利益から支払わなければなりません。
※累積赤字がある場合は法人税はかかりませんが、ここでは運転資金の借り入れの返済の影響を分かりやすくするため、法人税がかかる前提で話を進めます。
どういうことか、先ほどのお店の例で説明します。
仮に2月、3月と売り上げが半減し、4月の売り上げがゼロになったとします。そして5月も戻りきらず、半減状態が続くとします。その場合、累積の赤字はざっくり350万円ほど、通常の年間の営業利益分くらいです。
この危機を乗り越えるために400万円を無利子で借り入れたとします。そして次の年にコロナを乗り越え、通常の時の利益を出すことができました。年間の営業利益は400万円ほどなので、これでなんとか借入金を返せるように見えます。
終息が見えず、究極の選択を突き付けられている
しかしながら、ここから実効法人税率が35%ほど引かれるので、実際の返済原資は400×(1-0.35)=260万円ほどしかありません。400万円の運転資金の借り入れをした場合、返済するのにその後2年近くはかかります。
4カ月分の売り上げ減少を乗り越えるために借り入れても、その返済に約2年分の利益を必要とするわけです(※)。分かりやすくするために極端な例にしていますが、実際に飲食店は多かれ少なかれこのようなダメージを現在進行形で負っています。
そして、店を維持する分のキャッシュをいつまで積めばこの危機を乗り越えられるのか現時点では全く分かりません。いくら借り入れれば乗り切れるのか不透明なままに、当座をしのぐ借り入れをするのか、店を閉めるのかの選択を突きつけられ続けています。
この先、十分な補償がないままに「自粛」が続くのならば、おびただしい数の飲食店の屍が積み上がっていくでしょう。
※累積赤字を考慮しない場合