「30席、客単価3000円」のお店で計算してみる
単刀直入に言うと日本における飲食店は基本的に薄利多売です。業界では、一般的に5年残るお店は2割、10年残るお店は1割と言われています。これは日本の飲食店の競争過多な状況や、長く続いたデフレなどに要因があります。
業種業態によって違いますが、飲食店の収益は、「FLコストで60%前後が適正」と言われています。このFLコストというのは、
F=食材原価
L=人件費
です。これをそれぞれ30%前後程度に抑えるようにするのがセオリーです。
分かりやすいように、東京都心部における客席数30席、客単価3000円くらいで、そこそこお客さんの入っている架空の居酒屋を例として考えてみましょう。
飲食店の売り上げは、
月売り上げ=客数×客単価×営業日数
で表されます。そして、かかるコストは、食材原価・人件費・家賃を筆頭に、光熱費や広告費(食べログなど媒体の掲載費用など)、雑費などがあります。ざっくりとしたシミュレーションは以下の表をご覧ください。
上記以外にもいろいろなコストがかかってきますので、実際の営業利益はもう少し下がります。一般的に営業利益で5~7%前後です。飲食店の上場企業でも3~4%あたりが中央値になります。こうして見ればものすごく利益率の低い業界であることはご理解いただけるかと思います。
もし、1カ月の売り上げが半減したら?
それでは、コロナウイルスはどのような影響を数字上でもたらすのでしょうか。先ほどの架空の飲食店の売り上げが半減した場合をシミュレーションしてみます。
平時に得られる営業利益約2カ月分の赤字になりました。
店舗を回す人は最低限置かねばなりませんし、社員の人件費は削れません。アルバイトを削ったとしても、抑えられる人件費には限度があります。そして、家賃は基本的にどんなに売り上げが下がっても変わりません。今、コロナの影響で大家さんとの交渉も増えていますが、大家さん側にも懐事情がありますから、容易なことではありません。
売り上げが半分になると、このお店の場合は2カ月分の営業利益が吹っ飛びます。つまりこのお店の場合、4カ月の間売り上げが半減すると、その後の8カ月間は通常の売り上げに戻ったとしても、その1年間の営業利益はほぼゼロになります。固定費が厚く、利益が薄い飲食店の厳しい現実です。