入社10年以内の若い人事部社員は“もらい鬱”になるリスク
■マジメで有能な「人事部」社員が危ない
また渡辺さんは「企業の部署の中で、もっともコロナの影響が大きいのは人事部ではないか」という。優秀な人材確保・育成は会社の命運を握り、人事部員にとっても最も重要なミッションだが、新型コロナの感染拡大で採用計画は変更を余儀なくされている。
「そうなると、新卒採用がうまくいかず、新入社員向けの研修もできない。本人のせいではないのですが、人事部員は性格上、責任感が強くまじめな人が多いだけに、自分を追い込み、精神的につらくなる人も出るかもしれません。コロナ騒動によりメンタルが弱ってしまう社員への対応にも追われ、“もらい鬱”のような症状になるリスクもあります。特に入社10年以内の若い人事部社員は注意してください」
■メンタルがもともと弱い社員は「パニック状態」
上記の事例は主に健常者だが、もともと精神的に病みやすい人はコロナ騒動によりどんな影響を受けるだろうか。
「強迫性障の傾向があると診断されている方の場合、感染拡大のニュースを見るたびに悪化するリスクは十分にあるでしょう。例えば、手を洗っても洗ってもすぐウイルスや菌がついてしまうのではないかという恐怖感が高まります。洗いすぎて手はボロボロになりますし、触るところすべてをアルコール消毒して、触ったらアルコール消毒して、の繰り返しです」
リモートワークでは、もともと責任感が強くまじめな人や、思い込みやプライドの強い人が影響を受けやすい。平時では有能なビジネスパーソンだが、仕事環境の劇的な変化についていけず、対応できないのだ。
業績急降下で産業医を解雇する動きが……
今後、リモートワークが長期化すれば、企業業績のさらなる悪化が懸念される。渡辺さんが知る産業医仲間でも、「来月(4月)からはけっこうですので」と解雇された人がいるそうだ。業績悪化を理由に社員のメンタルヘルスをフォローする産業医を置かない企業が増えれば、リモートワークで病む社員もますます増えてしまうだろう。
「今後も予期せぬトラブルがあるでしょう。もし精神的に『危ないな』と思ったら視点を変えてください。リモートワークの悪い面だけにとらわれないこと。できるだけ家の中でのオン・オフを意識して、この生活にも終わりが来ることをイメージしながら乗り切っていきましょう」