人を紹介してほしいとお願いしたり、業務提携を申し入れたり、仕事の中で依頼という行為は日常的に行っているものだ。広く見れば新しいサービスの告知も、「ぜひこのサービスを使ってください」との依頼状といえる。
依頼状を書く際、私は「相手の立場になりきる」ことを心がけている。文章の一言一句を見て相手がどんな印象を受けるか――。
まだ社員数名の規模だった頃、我々からお願いして当社の転職サイト「Find Job!」の求人情報をヤフーの求人コーナーに提供させていただいたことがある。まずニュースやIR情報を収集して同社の戦略を理解するとともに、今、ヤフーにどのような魅力が足りないか、どうすればより収益を拡大できるかを考え抜いた。
そのうえで、当時はまだなかったアルバイト求人コーナーの立ち上げを提案した。当社はIT系のアルバイト情報を豊富に持っており、そこに我々の情報を掲載することで、御社は幅広いユーザーにリーチできるのではないか、と。
零細企業だった当社の依頼が受け入れられたのは「一緒に価値を提供したい」というこちら側の純粋な熱意が伝わったからだと思う。
困難そうに見える相手でも、熱意を持って依頼すれば動かせる。それを身をもって知ったのは、小学6年生のときだった。
私は小5でスイミングクラブに通い始め、水泳が得意になってきていた。そこで中学校では水泳部に入部したいと考えていたが、進学先の中学校には部がなかった。
じゃあ何をやろう? やっぱり水泳がいい。だったら中学校の校長先生に手紙でお願いしてみたらどうだろう。水泳仲間と話すうち、そんなアイデアが生まれてきた。
自分たちは何者で、なぜ水泳部をつくってほしいのか、部ができたらいかに頑張るか。熱意を伝える手紙を書き、担任の先生を通じて校長先生に渡してもらった。
返答は「君たちの希望通り、水泳部をつくることにしました」。これで好きな水泳に打ち込める!
一気に中学校生活が楽しみになったことを覚えている。
同時に何事も一生懸命考え熱意を持って行動すれば、大人社会に対しても変化を起こせると知った。この手紙の成功体験から得た考え方は私の精神的な柱の一つとなり、後の起業にもつながった。