アジアの格差問題に、欧米の中産階級が共感

過去に奴隷制度があった米国では、人種問題と言えばまず黒人の権利が意識される。そして、近年政治意識を強めたのがヒスパニック系。アジア系は政治的な難民としてスキルの高い移民が多かったことから、マイノリティとしての政治意識はまだ低い。しかし、映画界では近年、中国という巨大マーケットを意識した中華系シフトが起きており、アジア系の男女を主人公に据えた作品も登場するなど存在感を高めている。成長するアジアのストーリーの上に、欧米の中産階級が共感できる格差問題がのった。『パラサイト』が受賞するに至った道のりは必然であったと言えるだろう。

『パラサイト』の優れた点は、貧困家族がそれぞれ運に恵まれないが才覚がある一方、陳腐な悪人としても描かれている点だ。家族は互いにずけずけとものをいう一方、温かく愛しあっている。対する富裕層の家族も「シンプル」な良い人たち。ただ、彼らは出自も容貌も恵まれているからこそ邪気がないのであって、その無邪気さが貧困家族を無意識に追い詰めてゆく。

アカデミー賞の栄誉に輝こうとも、この映画に救いはない。出席したハリウッドセレブが身にまとう衣装や宝石、大豪邸はまさに映画のなかの富裕層と重なり、彼らが「シンプルに」作品を称賛して賞を授与するのも、その人のい性格を裏打ちしているにすぎない。

だからといって、この映画を作ることに意味がないわけではない。階級差やそこにあらわれる人間の本質を抉り出した過去の名作小説も、必ずしも貧困層自身によって書かれたわけではないからだ。それでも作品を褒め称えるにあたって、アカデミーよりはいくばくかの恥じらいを自分に残しておきたい、というのが私の感想だった。

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