意外と知られていない“筋トレの落とし穴”

加えて、現時点で慢性疲労や関節痛を抱えている人が筋トレを行うと、さらなる故障を呼び、つらい症状が悪化する確率のほうが高いと言えます。

例えば、デスクワークで背中から腰にかけての疲れを感じている人、あるいはもともと腰痛持ちの人が、「腰周りの筋トレで対抗することが大事」と誤解し、背筋や腹筋を鍛え始めたとしましょう。デスクワークなどでいつも前かがみの姿勢でいると、比較的初期に、まさしく背中~腰にかけての脊柱起立筋をはじめとした筋肉に、疲れや痛みが現れます。

これは、冒頭でお話しした、軽いマッサージで改善する「筋肉レベルの問題」で、正式には筋・筋膜性腰痛と呼ばれています。腰痛の“入口”もこの筋・筋膜性腰痛で、ひとことで言えば筋肉の疲労蓄積によって起こるものです。

この状態で腹筋や背筋の筋トレを行えば、累積疲労を増やし、状態の悪化を自ら後押しするようなものです。例えば背筋の筋トレなら、腰や背骨(脊椎)の関節に過剰な負荷がかかり、関節トラブルを促進させることにもなります。一方の腹筋トレーニングのほうは、力を込めて前かがみになる機会をわざわざ増やす運動です。そのため、背骨の骨(椎骨)と骨の間でクッション機能を果たしている椎間板への圧を高めることになり、椎間板ヘルニアという疾患を招きます。

筋トレにはこのように、「慢性疲労や関節痛がある人にとって、逆効果になることが多い」という“落とし穴”があることを覚えておいてください。

前傾姿勢の多い人に効く「壁オットセイストレッチ」

そこで、マッサージや筋トレの代わりに、ぜひお勧めしたいストレッチが、「壁オットセイストレッチ」です。仕事中でも、すぐに行うことができます。

オフィスで仕事をしていると、ついつい前傾姿勢を取りがちです。パソコン作業が仕事の中心になっている人ならなおさらで、ほかにも車の運転時間が長い人、前かがみで荷物を上げ下げしている人なども当てはまります。そして、普段からこのように前かがみになる習慣がある人では、腰の骨である腰椎に「前方へ体重をかける癖」がついてしまっています。つまり、「前方重心の体になっている」ということです。

壁オットセイストレッチでは、そんな前かがみの姿勢とは正反対のポーズを取ることで、多大なプラス効果をもたらします。