ふるさと納税も「共感」に支えられた制度だ
ふるさと納税なども、本来は、こうした関係性に基づいた地方創生のための資金調達プランだったはずです。カニや牛肉など豪華な返礼品合戦になってしまって、本来の趣旨からやや離れてしまっていますが、本来は、応援したい地域を個人が選んで納税し、その税金の使われる先を見届けたり、長期的な関係を築くためのものです。
その地域に定住していなくても、納税できる。納税するためには、本来、その地域のことを理解しようとするはずです。どんな魅力があるのか、どんな課題があるのか。どんな首長がいて、どんな政策がとられているのか。もともとその地域の出身だったり、かつて住んでいたから、応援の意味を込めて納税するという人もいるでしょうし、調べるうちに気になって、いつか訪れてみようという人もいるかもしれません。
つまり、個人が自分の好きな地域、応援したい地域を選んで出資(納税)する。そのベースには共感と関係性があります。
ちなみに、行きすぎた返礼品合戦に関する指摘を受けて、改善に向けた制度変更や自治体への要請が進んでいますから、今後は、本来の趣旨に沿ったプランが増えていくのではないでしょうか。返礼品目的だけではない、より関係人口を深め創出したり、直接的な地域へのより直接的な貢献ができるようなプランも、この枠組みの中で生まれてくるのではないかと思います。
リモートワークで地域との関係性が生まれる
話を元に戻します。そうした潮流の中で、リモートワークや多拠点居住というのは、地域との関係性を育むための重要なツールになってくると思うのです。
多くの自治体がリモートワークやワーケーションやお試し移住の誘致を促進しています。ちょっと海のそばで仕事したいから、たとえば福岡県糸島市のコワーキングスペースで一週間リモートワークする。滞在する間に、地元の人と仲よくなる。すると帰ってきてからも、ニュースで糸島のことが出てくると、ちょっと気になってしまう。いろいろな情報がアンテナにかかるようになってきて、さらに興味が出る。そんな関係性を育むきっかけになったりします。
もちろん、ただその場所を旅行するだけでも関係性は生まれます。ただリモートワークやワーケーション、多拠点居住というのは、日常に近づく分だけ、その地域の本来の姿を理解するのに向いているのかもしれません。