クラウドファンディングではリターンより共感が先立つ

これは実は、地方自治体や地域のプロジェクトがお金を集めるために、とても相性のいい方法なのではないかと思います。なぜでしょうか。

それは、クラウドファンディングを成功させるために必要なのは、まず話題性、そして共感だと思うからです。より正確に言うなら、ひとりでも多くの人に共感してもらうための手段として、話題性があるということかもしれません。

何度か訪れたことがあって、仲よしの人の顔が何人も思い浮かぶ。そんな地域が、もしも台風や災害に遭ってしまって、災害復興の資金をクラウドファンディングしていたら、きっと寄付したいと思うのではないでしょうか。それは金銭的なリターンのためというよりは、まず地域の人たちへの共感があり、何かしたいという思いが先に立つのだと思います。

資金調達は「大きな金融機関」から「無数の個人」へ

インターネットというのは、小さなものを広く集めるのが得意です。すごくマニアックなプロジェクトがあったとして、地元の金融機関から3000万円出資してもらうのは難しいかもしれませんが、全国津々浦々を探せば、同好の士や共感してくれる人がいて、3万円ずつ1000人から集めることはできるかもしれません。大分県別府市の「湯~園地」プロジェクトには、3638人のパトロンが集まったそうです。

つまり、リビング・シフト(東京から地方への移住)によって、新たなビジネスモデルが生まれる一方で、ビジネスの血液となる資金調達のあり方までもが、少しずつ変わってきていると言えるのではないでしょうか。その背景にあるのは、大きな金融機関による貸付や投資から、無数の個人との関係性へのシフトです。これまでも脈々と続いてきた、そうした関係性が、リビング・シフトによって、つなぎ合わされ、強化されていく。そんな仮説を持っています。