日本では1500万台の自動車が消失

現在、日本国内には約6200万台の自家用車が登録されている。最大で25%、自家用車の比率が低下するということは、1500万台の自動車がなくなることを意味している。自動車メーカーはシェアされるクルマが増える分、販売台数が減ることに加え、ディーラー(自動車販売店)網も大幅な縮小を余儀なくされるだろう。各地域のディーラーは、主に自家用車を売っているので、その影響は大きい。

実際、トヨタなどは、地域の販売店をカーシェアの拠点にしたり、介護サービスを併設するといった大胆な事業変革プランを検討している。

自動運転やカーシェアが現実的になると、クルマは、所有するモノから利用するモノへと本質的な変化を遂げる。そうなると、自動車という商材の位置付けそのものが大きく変わることになる。

これまでの時代、クルマというのは所有することが利用の必須条件となっていた。一部にはハイヤーなどのサービスもあるが、基本的に使いたい時にいつでもクルマを自由に使うためには、自ら所有する必要があった。そうであればこそ、クルマはある種のステイタスシンボルとなっていた。自動車という商品は細かくグレードが分かれており、中産階級と富裕層で乗る車が違っていたのはこうした理由からである。

従来の嗜好品的要素が一気になくなる

だが、自動運転やシェアリング・サービスが普及すると、話は変わってくる。自ら所有するものではないので、一般的なサービスと同様、質の高いサービスを受けたければ高い料金を払い、そこまでの必要がなければ、一般的な料金を払うというドライな選択になる。自ら所有していることを周囲にアピールする必要がないため、クルマという商品から嗜好品的要素が一気になくなってしまう可能性すらある。

同じくコンサルティング会社であるアクセンチュアが行った調査は興味深い。

米国、欧州、中国の3地域における7000人の消費者に対して、自動車の所有について尋ねたところ、本格的に自動運転システムが普及した場合、48%が自動車を手放すと回答している。注目すべきなのは高級車オーナーの回答である。

現在、高級車に乗っている人に限ると、自家用車を手放す人の比率は、米国は39%、欧州は55%、中国に至っては78%に達しており、米国を除くと平均値よりも圧倒的に高い。つまり富裕層ほど積極的にクルマを手放すことについて検討しているのだ。

これは、先ほど説明したように、クルマという商品から嗜好品的な要素がなくなり、ステイタス・シンボルとしての役割が消滅する可能性を示唆している。

富裕層ほど時代の変化に敏感であり、社会がどう動くのか冷静に分析している。イノベーションの進展によって、嗜好品的価値をなくしてしまう自動車に対しては、すでに興味を失いつつあるということなのだろう。