「気違いは志らくしかいない」

落語家・立川志らく(56)は天才である。ある一点だけを除けば。

立川志らく
写真=時事通信フォト
第32回日本メガネベストドレッサー賞。東京都江東区=2019年10月8日撮影

師匠の立川談志は、「オレの狂気を継げるのはこいつしかいない」といっていた。

昔、談志が志らくにこういったという。

「俺は百年に一度の天才ではなく、突然変異、気違いだ。気違いでない落語家は上手くなるか面白くなるかしか方法はない。気違いは志らくしかいない」(立川志らく『雨ン中の、らくだ』太田出版より)

談志は昨年亡くなったフランスのシラク大統領が好きだった。シラクは相撲が好きで、日本文化にも精通していた。その名前をとって志らくと名付けた。いかに談志が、志らくに期待していたかがわかろうというものだ。

多才である。映画好きが高じて自ら脚本を書き、監督をして何本も撮っている。映画を題材にした「シネマ落語」という持ちネタもある。演劇は落語より好きなのではないかと思うほど熱心だ。自前の劇団を持ち、脚本、演出、主演もこなす。

本人は学生時代、『ゴッド・ファーザー』のアル・パチーノに憧れ、俳優になろうと思い立ち、ニューヨークのアクターズ・スタジオに入ろうと考えたこともあったという。