ネットとの「距離の取り方」をコントロールできていない

——「書く」というスキルは広く必要になるということですね。

インターネットを通じて不特定多数に情報を発信するスキルは、僕らのようなメディアに関わる人間や企業で広報関係の仕事に就いている人たちだけでなく、これからはあらゆる人にとって必要になるはずです。すべての人がネットワークにつながれている時代には、すべての人が物書きであり、発信者になるわけですから。

しかしこのあたらしいタイプの「物書き」には編集者がついていないので、結果的にフェイクニュースを拡散したり、不毛なバッシングに加担してしまっている人が増えてしまった。インターネットとの「距離の取り方」をコントロールできていないわけです。だから僕たちが物書きや編集者として培ってきたノウハウを今の時代に合う形でアップデートし、人々と共有したいと考えました。

——「書く」ことを学ぶワークショップとはどういう内容なのですか。

今年1月から開校した「PLANETS School」は1年間のカリキュラムです。講師は僕一人。さまざまな講師が登壇するのではなく、「宇野がこれまで身につけてきた〈発信する〉ことについてのノウハウを共有する講座」です

積極的に学び合いたいという500人弱のメンバー

僕らは2018年から「PLANETS CLUB」という読者のコミュニティを運営しています。「PLANETS School」の始まりは、そのメンバーを対象とした勉強会でした。「PLANETS CLUB」は月1回の定例会と各種の勉強会を中心としたコミュニティで、積極的に学び合いたいという500人弱のメンバーが集まっています。

読者コミュニティ「PLANETS CLUB」の3月の内容
読者コミュニティ「PLANETS CLUB」の3月の内容

このコミュニティには手応えを感じていました。とても雰囲気がいいんです。メンバーは業界のゴシップなんかには全く興味がない。それぞれの思想信条や趣味判断がありつつも、それはいったんカギカッコに入れて学びに来てくれる柔軟性もある。

ただ、メンバーと接しているうちに、「情報を発信したい」というニーズがあることがわかってきました。そして僕らとしても、もう少しアクティブにノウハウを共有すれば、もっと面白いことになりそうだ、という気持ちが生まれてきた。

この試みに爆発的な広がりがあるとは思っていません。それで僕は構わない。近い距離感で向き合えるコアな読者と関係が築けたからこそ、その延長線上で一歩を踏み出すことができたわけですから。