疑問には常時接続、聞き流す力を発揮

トップアスリートへの取材を行うと、いつも感心させられることがあります。それがほぼ一致していることに改めて驚かされました。共通点は3つ。いずれも競技に対する姿勢や考え方に関するものです。

(画像左から)鈴木桂治氏、高橋尚子氏、山下泰裕氏、岩崎恭子氏、米満達弘氏
(画像左から)鈴木桂治氏、高橋尚子氏、山下泰裕氏、岩崎恭子氏、米満達弘氏(AFLO=写真)

まず1つめは「常に疑問を手放さない」。どうすれば勝てるのか、どうすれば記録を更新できるのか。絶えず「どうすればいいんだ?」と自問している。

たとえば柔道の鈴木桂治さん。アテネ五輪では、見事な足技で金メダルまでの道を駆け上りました。その足技を極めるために、外を歩くときは標識でも電柱でも、立っているものがあればとりあえず足を絡め、重心を探っていました。

課題に対して意識がいつでもオンになっている。何をするときも常に考え続けているということで“節電モード”くらいかと思いますが、意識を絶対にオフにはしない。すると思わぬところからアイデアが飛び込み、活路が開けるのです。

▼鈴木桂治(柔道 100キロ超級 2004年アテネ五輪 金メダル)
毎日のように斉藤仁先生の足めがけて、刈る、払うといった稽古をするのですが、そのたびに「違う、違う、そうじゃない。足技はカタチじゃない」と言われ続けました
どうすればカタチにとらわれずに、威力のある足技を出せるのか? 鈴木の頭の中は二本の足でいっぱいになった。地面に立っている長い物を見つけると、とりあえず足を絡めた。信号を待っている間も惜しんで、脇に立っていた一方通行の交通標識や電柱に足技をかけて、繰り出す足の角度を研究した。