ビジネスマンこそスポーツに学ぶべき

マラソンの高橋尚子さん。人当たりが柔らかい、鋭さなんて微塵も感じさせない女性に思えますけど、競技に対する観察力はものすごい。

長田渚左『勝利の神髄 1928‐2016』(プレジデント社)
長田渚左『勝利の神髄 1928‐2016』(プレジデント社)

彼女が金メダルを獲ったシドニー五輪。マラソンコースはカーブやアップダウンが多く「史上最大の難コース」といわれていました。だから事前学習が大事で、小出義雄監督も「10回は試走させたい」と話していた。それなのに彼女はわずか1度の試走だけで「目をつぶっても走れるくらいに熟知した」と。名伯楽の小出さんでさえ耳を疑ったというのですから、その観察力は世界一でしょう。

スポーツは、1度のチャンスをつかめるかどうか。そして、明確に結果が出て、極めてシニカルで残酷なところがある。「トップアスリートは通常の人の3倍のエネルギーで生きている」と私は常々思っています。自分の子どものような年齢の選手を取材することもあるのですが、競技に関しての話はとても深く、言葉が凝縮されている。人生経験とは別です。その燃焼度の高さを想像することが、スポーツ観戦の醍醐味であり、ビジネスの世界に身を置く人が学ぶべきところなのです。

▼高橋尚子(マラソン 2000年シドニー五輪 金メダル)
常識的なことをしても獲れなかったのなら、非常識なことの延長線上にしか、金メダルはないのではないかと考えていました

史上最大の難コース攻略のため、高橋はさらに苛酷なトレーニングを自らに課した。標高約1600メートルの練習拠点のボルダーを、はるかに上回る超高地での走り込みである。高橋の超高地トレーニング計画が報道されると、スポーツ科学の研究者らから批判的な意見が噴出した。「体が対応しきれず無謀で危険」「疲労が蓄積して逆効果」
(構成=須藤靖貴)
【関連記事】
なぜラグビーの外国人代表は「助っ人」と呼ばれないのか
「五輪裏方軍団」が60人から8000人に増員のワケ
応援自粛の東京マラソン「ナイキ超厚底で日本記録」と豪語する男の狙い
ラグビーを「紳士のスポーツ」と呼ぶのは間違いである
「部活が忙しくて勉強ができない」に潜む根本的な間違い