問題は日本人の思考回路にある

語学力ではないとすると、何が問題なのでしょうか。ひとつ考えられるのは日本人の思考回路です。論理的な思考回路が身に付いていれば、多少、言葉が不自由でもビジネス的な意思の疎通は可能です。ところが、思考回路そのものが非論理的である場合、どれだけ語学ができても、正確に相手に意思を伝えることができなくなってしまいます。

以前、ネット上のまとめサイトに文章の読解力に関する記事が投稿されたことがありました。「今週は暑かったのでうちの会社はサンダル出勤もOKだった」というツイッターのつぶやきに対して「なぜ今週だけはOKなんだ?」「サンダルない人は来るなって?」「暑いならともかく基本はNGだろ」といった反応が一定数返ってくるという内容でした。

この記事を投稿した人は、こんな簡単な文章なのに、意味を理解できない人があまりにも多いと嘆いていたわけですが、奇妙な反応を返した人は、「サンダル出勤がOK」というキーワードだけが目に入っていた可能性が高いと考えられます。つまり、文字は読んでいても、文章は頭に入っていないということになります。

ツイッターのクソリプの大半は読解力不足

ニュースサイトのコメント欄を見ても、明らかに文章を読んでいない人のコメントや、ひとつのキーワードだけに反応し、文脈をまったく無視したコメントが無数にアップされているのが現実です。文章を読んでいない、あるいは読めていない人が一定数存在しているのは間違いないでしょう。

ジャーナリストの佐々木俊尚氏は、ツイッターでのクソリプ(どうしようもない返信のことを指すネット上のスラング)の原因は大半が読解力の不足によるものではないか、と指摘しています。ツイッターは、瞬間的に反応して返信するという役割を持ったツールであり、勘違いによる返信が一定数存在することはやむを得ないことかもしれません。しかしながら、文章が読めていないという指摘はこれ以外にもあちこちに存在しています。

投資銀行家で「ぐっちーさん」の愛称でも知られる山口正洋氏は、ビジネス上のメールの内容をきちんと読めていない日本人が多すぎると自身のコラムで指摘していました。内容があいまいなまま物事が進むので、実際に会って内容を再確認しなければならず、これが仕事の効率を悪化させているそうです(山口氏は2019年9月、がんで亡くなられました)。