日本でテレワークが進まない理由

ひとつは可能な限り、口頭ではなく文書でのコミュニケーションを実施するよう心がけ、このやり方に社会全体として慣れていくという方法。もうひとつは、表現や表記の方法を体系化し、可能な限り分かりやすくするという方法です。

日本では以前からテレワークなど、遠隔で勤務できる環境整備が必要と指摘されてきましたが、一向に導入が進んでおらず、これが企業の生産性に悪影響を与えています。日本でテレワークが実現できないのは技術的な問題ではなく、メンタルなものである可能性が高いと考えられます。

日本の職場では、業務の指示や責任の範囲が不明瞭なことが多く、チーム全員が顔を合わせて、状況を逐一確認していかないと仕事が進みません。確かに、表情やしぐさ、声など、ビジュアルな情報があれば、言語が不明瞭でもおおよその意思の疎通は可能でしょう。しかしながら、こうしたスタイルにばかり慣れてしまうと、文書を読み書きする能力が高まらないのは当然のことです。

外国人に対しては、いわゆる「あうん」の呼吸が通用しませんから、これがグローバルなコミュニケーションを阻害していると考えられます。

業務の指示や責任の範囲が、文書で論理的に行われるようになれば、文章の読解力は確実に向上しますし、テレワークやグローバル活動も進むという好循環となるでしょう。

日本のサイトは情報がまったく整理されてない

これと同時に情報を体系化するトレーニングも必要です。

筆者は職業柄、日米の経済統計をウェブサイトで閲覧することが多いのですが、両国のウェブサイトには驚くべき差があります。

米国のサイトの方が英語という外国語であるにもかかわらず、内容が直感的に理解しやすいのです(参考までに、筆者には外国留学や外資系企業の就労経験はなく、ごく一般的な英語力しかありません。英語の基礎力が高いことで内容が容易に理解できているわけではないことに留意してください)。

日本のサイトは、統計データに関連するおびただしい注記事項が羅列してあるだけというケースが多く、情報がまったく整理されていません。つまり、様々な立場の人が読むことをまったく想定していないのです(あるいは想定していても、体系立てて表記できないのかもしれません)。

困ったことに、こうした分かりにくい情報に対して改善の要求が出されるのではなく、詳細を知っている人が、分かりにくさを利用して、分からない人に対して優越的な立場に立つという(俺は知っているぞという、いわゆるマウンティングをする)、本末転倒な現象も散見されます。あなたの職場にも、分かりにくい情報しか提示できないにもかかわらず、「こんなことも知らないのか」と悦に入る同僚がいないでしょうか。