ドイツの小売店の深夜営業が日本より少ない理由

深夜営業や休日営業の規制についてよく引き合いに出されるのが、ドイツやフランスです。ドイツには有名な「閉店法」と呼ばれる法律があり、小売店の深夜営業や休日営業は法律で規制されています。フランスにも同様の規制があり、小売店の種類によっては深夜や休日に営業することができません。

両国とも規制緩和が進んでおり、24時間営業を実施する店舗は増えましたが、日本と比較すれば、深夜や休日に営業している店舗は圧倒的に少数です。実はこの部分がとても重要です。

特にドイツにその傾向が顕著ですが、大幅な規制緩和が行われた結果、多くの店が24時間営業に移行したのかというと必ずしもそうではないのです。法律上では規制されていなくても、いまだに深夜や休日には休む店が多数を占めています。

フランスの場合には、イスラム教徒など移民が経営する小売店を中心に、以前から深夜・休日営業が行われていましたから、実質的に不便はなかったという背景はあるものの、やはり規制緩和によって多くの店が24時間営業に移行したわけではありません。つまりフランスもドイツも、事業者側は無理に営業時間を延長するつもりはないようです。

事業者が無理に営業時間を延長する必要がないのは、ドイツとフランスの生産性が高く、基本的に企業が儲かっているからです。利益を上げることができず、生産性が低下している状態で、いくら営業時間のことについて議論しても、まともな解決策は出てこないでしょう。

生産性はたった3つの要素で決まる

これまで見てきたように、日本はすでに豊かな先進国ではなくなりつつあるのですが、その最大の原因となっているのが生産性の低さです。

生産性の問題については、すでにメディアで何度も報じられていますから、言葉そのものはよく耳にしているという人が多いと思います。しかしながら、「生産性とは何か」と真正面から問われてしまうと、案外、答えに窮してしまうのではないでしょうか。

生産性の定義が分からなければ、状況を分析することもできませんし、正しい処方箋を書くこともできません。この問題と真剣に向き合うためには、まずは生産性の定義について理解しておくことが重要です。

生産性というのは、企業が生み出した付加価値を労働量で割ったものです(図参照)。

生産性の定義

何をもって付加価値とするのかについては、いろいろな考え方がありますが、企業会計ベースの場合には会計上の売上総利益(いわゆる粗利益)を、マクロ経済ベースでは企業の粗利益の集大成であるGDP(国内総生産)を用いるのが一般的です。

労働量については、通常、社員数と労働時間を掛けた数字を用います。つまり企業が得た利益を、社員の数と労働時間の積で割ったものが生産性ということになります。

計算式で表わすと、企業が得た粗利益(マクロ経済的にはGDP)が分子となり、労働者の数×労働時間が分母となるわけですが、生産性の定義はズバリ、これだけです。