利益を増やすか、社員数を減らすか、労働時間を減らすか

要するに生産性というのは、①付加価値、②社員数、③労働時間という3つの要素で構成されており、言い換えれば、生産性を向上させるためには、この3つの数字のどれかを変える以外に方法はありません。

式を見ると、分子が付加価値で分母が社員数と労働時間ですから、生産性を向上させるには、分子を増やすか分母を減らすのかのどちらか、あるいはその両方となります。つまり、付加価値を上げる(利益を増やす)か、労働時間を減らすか、社員数を減らすかの3つしかないのです。

世の中には、やたらと話を難しくしたがる人がいて、これが議論を混乱させる要因となっていますが、むやみに話を難しくする行為というのは、自分には知識があることをアピールしたいという、ただのマウンティングにすぎません。

繰り返しになりますが、生産性を上げて、私たちの生活を豊かにするためには、利益を増やすか、社員数を減らすか、労働時間を減らすしか方法はないのです。ここは非常に重要な部分ですから、ぜひ覚えておいてください。

さらに分かりやすく、くだけた表現を用いるのであれば、生産性を上げるためには、より儲かるビジネスを行い、できるだけ社員数を少なくし、同時に労働時間を短くすればよいわけです。

日本の生産性がドイツや米国並みに高かったら……

ここで先ほど例として取り上げた、1万ドルを稼ぐために、何人の社員が、何時間労働する必要があるのかという話を思い出してください。

この式に当てはめれば、分子に相当する付加価値(利益)が1万ドルで一定だった場合、どうすれば生産性が上がるのかという話と同じことです。日米独の比較では、日本がもともと多くの人数を投入して、長時間労働を行っていました。

もし、日本の生産性がドイツや米国並みに高ければ、その分の人材や労働時間は別の仕事に充当されることになります。新しい仕事が生まれるということですから、これはマクロ経済の定義上、GDPの拡大につながります。GDPが増えれば、国民の総所得が増加しますから、これは豊かさに直結します。

のちほど、日本企業の社内には、実質的に仕事がない人がたくさん在籍しているという問題を解説しますが、この話も、企業単体で見ればムダが多いという程度のイメージにしかならないかもしれません。しかし、経済全体にまで視点を広げると話は変わってきます。