監督でいえば、西武の伊東勤監督は失敗してもあまり怒りませんでした。それよりも「なぜ失敗したのか?」と選手に質問して、考えさせるんです。野球は失敗と向き合うスポーツです。3割を打つ打者でも、7割は失敗しています。打てなかった事実にフォーカスして、どうしたら同じ失敗をしないかを考えて、打率を上げていかないといけません。そこを質問で上手に意識させてくれたのが、伊東監督でした。

監督業と経営者業は似ています。自分の部下が失敗したら、叱るよりも先に「なぜ失敗したか」を聞いて、次にどう活かすかを考えさせたいですね。

失敗も利用!「落とし営業」

野球は36歳で引退して、父が創業した測量、地盤改良工事を行う会社に就職しました。今、取引先と草野球をする機会があります。フライを落としてあげると、めちゃくちゃ喜ばれるんですよ(笑)。これは僕にしかできない「落とし営業」。いいんです、失敗だって使えるものは使ってしまえば。

失敗して辛いときは、「今は苦しいけど、後々、シンデレラストーリーとして語れるな」という視点があってもいい。僕は野球で芽が出なかった時期、アルバイトをしながら、「もし将来、スーパースターになったら、こんなサクセスストーリーはないぞ」と想像を膨らませていました。

読者は、僕のことをプラス思考と思うかもしれません。実は違って、もともとは超マイナス思考です。だからこそ、なるべく起きたことに対してプラスに考えるように訓練しています。

訓練として、普段からネガティブなことは口にしないようにしています。不安なとき、「失敗したらどうしよう」と思うことまでは許すけれど、口では「絶対いける」と言葉に出す。口も筋肉。反復練習することでマッスルメモリーされて、失敗が少なくなる気がするんです。素振りのように。……やっぱり僕、野球が染みついてますね(笑)。

(構成=小林 力 撮影=八木虎造)
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