居酒屋ランチという強力なライバル
値上げの繰り返しにより、現在の定食の価格は800円台と900円台が主流となっている。1000円以上のものも少なくない。ライバルの「やよい軒」と比べると、定食の単価は100円程度高いだろう。たとえば、やよい軒の定番「サバの塩焼定食」は670円だ。こうした価格の高さが敬遠されて、大戸屋では客離れが加速した。
大戸屋を取り巻く環境は厳しさを増している。「やよい軒」「まいどおおきに食堂」「めしや宮本むなし」などの同業はもちろん、異業種との競争も激化している。例えばランチタイムに定食を提供する居酒屋があるが、大戸屋より安いところもあり、大きな脅威だ。
異業種の競合は居酒屋だけではない。「吉野家」など牛丼店や「かつや」などとんかつ店、「バーミヤン」など中華料理店で定食を販売するところがあり、部分的に競合する。当然、コンビニ弁当も競争相手といえるだろう。
主菜1品+副菜+ご飯というスタイルが基本の定食店は、主菜となる1品を専門的に販売する店と競合関係になりやすい。魚系の定食であれば海鮮系居酒屋と、とんかつ定食であればとんかつ店と、野菜や肉を炒めたり揚げたりした定食であれば中華料理店と競合する。
専門店はその分野のプロなので、メインとなる食材を安価で仕入れやすく、定食にしても価格が抑えられる。定食店はその点で不利にならざるを得ない。
大戸屋が選んだのは「脱手作り」
やはり大戸屋に必要なのは、価格帯の引き下げだ。そのためにはコスト削減が欠かせない。大戸屋がそのために選んだのは、「脱手作り」の道だ。
大戸屋は店で手作りで調理する「店内調理」を売りとしている。店で野菜を洗って下ごしらえをする。店で鰹節を削り、だしをひく。肉や魚も店で仕込みを行い調理する。こうした手間をかけて料理のおいしさを高めてきた。
ただ、店内調理は手間がかかるためコスト増につながりやすい。特に近年は人手不足により人件費が高騰しているため、コスト増が顕著だ。大戸屋はこうしたコスト増を吸収できず、価格に転嫁せざるを得ない状況になっていた。
そこで、カット野菜などの加工品も活用して業務効率を上げ、コスト低減を図る考えだ。店内調理の原則は維持するという。