ミスドも王将も店内調理を減らしている

こうした動きは大戸屋に限ったことではない。「脱手作り」に舵を切る外食店が目立っている。ドーナツチェーン「ミスタードーナツ」は店内調理をしない店舗を増やし、近隣店から商品を調達する体制への切り替えを進めてきた。調理担当の人手不足への対応のほか、調理設備にかかるコストの削減を図った。中華料理チェーン「餃子の王将」は餃子を店舗で包むのをやめて、工場で包んで店舗に配送する方式に切り替えた。店舗での作業軽減と料理提供時間の短縮を図っている。

「脱手作り」で懸念されるのは、おいしさの低下と訴求力の低下だ。だが、現在は加工品を作る技術が進化しており、手作り品に負けない品質を確保できるようになっている。

筆者の個人的な感想になってしまうが、工場での成型になっても王将の餃子のおいしさが変わった印象はまったくないし、おいしさのイメージも低下していない。筆者は餃子の王将の「餃子」(6個)と、店舗で餃子を包む中華料理チェーン「大阪王将」の「元祖焼餃子」餃子(6個)を食べ比べたことがあるが、おいしさは同レべルで価格もほぼ同水準と、餃子自体に違いを見つけられなかった。

ブランドのアイデンティティーとどう両立するか

大戸屋がカット野菜などの加工品も活用するのはアリだろう。手作り感は強い訴求力があるが、一方で安く商品を提供することも重要だ。もちろん両立できるのが1番だが、食材費や人件費の高騰など昨今の経済状況から両立は難しくなっている。どちらを重要視すべきかといえば、安く商品を提供するほうだろう。

とはいえ、大戸屋の手作り感はブランドのアイデンティティーになっている。餃子の王将の餃子と同じようには考えられない面があるのも事実だ。定食と餃子とでは、手作りかどうかでおいしさが左右される程度も異なるだろう。そのため、できれば店内調理の原則は崩さないようにしたいところだ。

餃子の王将にしても、チャーハンやニラレバ、酢豚などは店舗で手作りし、それを売りにしている。同様に大戸屋でも、店内調理を原則として一部で加工品を活用するのは妥当だろう。