確定申告はあくまで自主申告だ

「副業」をしてみて生活が楽になったとか、潤っている感がある場合は、課税ベースに乗せるくらいの儲けがあったと思うべきだ。そういった人は、手元にある領収書を合計してみて、経費が収入金額より多くなったと思って安心していてはいけない。

その中に、生活費としての出費は含まれていないだろうか。友達との楽しみのために使ったお金が入ってないだろうか。

税理士の資格を持ってもいない人が、領収書さえあれば何でも経費で落とせるという本を書いているようだが、鵜呑みにしていないだろうか。著者の主張通りに申告しても、その著者は税理士でなければ何ら責任を問われるものではない。

確定申告はあくまで自主申告なのだ。その責任は、申告した納税者自身にある。ひとつひとつの経費について、その収入を得るために直接必要だったのかどうか検討する必要がある。

国税庁のHPには、税務訴訟資料というページがある。「副業」が事業所得なのか雑所得なのかについての判決が公表されているので、一読されるとよいだろう。

上に紹介した事例では、「副業」を事業所得と考えて青色で確定申告をしていた納税者に対して、事業所得には該当せず雑所得とする判決が出ている。形式基準ではなく、実質的にどうなのかということが判断材料になったようだ。

「副業は事業所得」と勘違いしていると…

「副業」はあくまで「本業の傍らで行うもの」という考え方によるものだと思う。「本業」だけでは心もとないので、「副業」で利益を得ようとしているのだから、そこからマイナスが発生することは認めないということだ。

事業所得は青色申告控除や損益通算といった恩恵がある。「副業」は「業」がつくから事業所得だろうと安易に考えると、後々の税務調査の際に誤りを指摘されて追加の税金を支払うことになる。

飯田真弓『税務署は3年泳がせる。』(日本経済新聞出版社)

冒頭で、「副業」は事業所得だと早合点すると“後で”痛い目に合う可能性があると書いた。それは、確定申告の時点ではなく数年後の税務調査でツケが回ってくるという意味なのだ。

「副業」の確定申告を安易に考えてはいけないということがおわかりいただけただろうか。「副業」の確定申告をして、還付金が戻ってきたことがあるという人へ。

重ねて言うが、お金が還付されたことで安心してはいけない。

後になって税務署から連絡があるかもしれない。

「税務署は3年泳がせる。」のだから……。