明日やれることは今日手をつける

最近、以前よりも元気になった気がしています。認知症になって失ったものも、もちろんあるけれど、世界が広がりました。

長谷川和夫・猪熊律子『ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言』(KADOKAWA)

自分が認知症であることをいち早くカミングアウトしたクリスティーン・ブライデンさんは、「私は最も私らしい私に戻る旅に出るのだ」といいました。いまのボクもそんな気持ちです。ブライデンさんが通ってきた道をいま、ボクも通っている気がします。

いま、心がけているのは、明日やれることは今日手をつけるということです。

たとえば、本を書きたいなと思ったら、せめてその一文のようなものを、1行でも2行でもいいから、今日書いてみる。とにかく手をつける。全部はとても無理だから、少しだけでいい。そうすると、未来に足を伸ばしたことになります。何もしないでとどまっているよりも、未来に希望がもてるし、楽しみも増えます。何よりも、自分自身が安心できます。

死を上手に受け入れる

少し足を伸ばした未来は、やがて「いま」になります。いまがいちばん大切です。過去に起きてしまったことや、過去に自分がやったことは変えられないし、どうしようもない。でも、じつは過去というものは、ほんとうはないのです。過去とは、いま。なぜなら、昔のことを思い出したり、話したりしているのはいまなのだから。

「いま」という時間を大切に生きる。繰り返しになりますが、生きているうちが花です。そう思いながら、社会や人さまのお役に立てることを、自分ができる範囲でやっていきたい。そして最後は、一回きりの死を上手に受け入れて、旅立っていきたいと思っています。

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