人を奮い立たせる言葉がある。困難に向かう勇気を与えてくれる言葉がある。選手をメダルに導いた指導者は何を語ったのか? スポーツジャーナリストが「ひと言」の共通点を探る。
心に刺さった名将の教え
これまで夏季オリンピックで日本選手は金142、銀134、銅163の計439個のメダルを獲得してきた。もちろん、これは選手の功績なのだが、指導者の存在も見逃すことはできない。厳しい練習に選手が音を上げそうになったとき、不調に陥ったとき、プレッシャーがかかる五輪の戦いに臨むとき、選手の支えになるのが指導者の言葉だ。その「ひと言」はどのような効果をもたらすのだろうか。
日本五輪史上で厳しい指導者といえば、まず名前があがるのが大松博文氏だ。前回の東京五輪の女子バレーボールで金メダルを獲得した全日本チーム、有名な“東洋の魔女”の監督である。
大松監督が決勝のソ連戦の前に選手に言った言葉が「おまえたちほど練習を激しくやったチームは世界のどこを探してもない。だから、どんなときでも練習のプレーを試合で発揮することだ。そうすれば必ず勝てる」だ。