なぜ、大阪の阪急電鉄があの六本木にホテルを出すのか

今、多くの電鉄会社は、新たなビジネスに乗り出しています。その代表が、ホテルや賃貸マンションなどの不動産事業です。かつては、こうした建物は、自社の沿線に建てるのが常識でした。しかし昨今は、様相が異なります。

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たとえば、私の会社がある赤坂には、京王電鉄は通っていないにもかかわらず、近年、京王電鉄系のホテルがオープンしました。それだけではありません。関西を地盤とする南海電鉄系のホテルもオープンしました。

赤坂のお隣、六本木には、2017年3月に阪急電鉄系の阪急阪神ホテルズの「レム六本木」が開業しています。建物は地上20階建て。客室はシングル、ツインの全400室。六本木駅から徒歩約1分という場所にある大型ホテルです。

これは東京中心部だけでなく、全国的な現象です。全国の主要都市をまわっていると、在京・在阪の電鉄系ホテルが、次々とオープンしていることが実感できます。つまり、電鉄会社は自らの地盤に関係なく、上場企業としての生き残りをかけて、運賃に代わる収入を得ようと猛烈な出店攻勢をかけているのです。

言い方をかえれば、自社の鉄道が敷かれている沿線の発展はもう見込めないと考えているということです。インバウンドを中心とした観光業、とくにホテル業で収入を得ていこうという考えにシフトしたのです。ホテルだけではありません。自社が保有する遊休地に賃貸マンションを建て、新たな収入を増やすことにも取り組んでいます。

どの電鉄会社も、自分たちの本業がすでに頭打ちであることに、もう何年も前から気づいているのです。そんな折、2019年9月、東京急行電鉄が、社名から「電鉄」を外し、「東急」と商号変更しました。元来の本業であった鉄道事業は10月に分社化し、不動産事業を中核とする方針を取ったゆえの社名変更です。このニュースなどまさに、ここまで記してきたことを象徴する出来事だと思います。