20~40代のIターン移住者5人へのインタビュー

★加藤大樹さん(40)

JAで椿油の仕事に携わる加藤大樹さん(40)は、利島歴5年目とまだ浅いが、すっかり島の人といった感じだ。狭い急勾配の坂道運転もお手の物。すれ違う島民はみんな知り合いだ。

加藤さん(撮影=小塩真一)

もともとは自然豊かな埼玉・長瀞の出身。美容院を経営していた母親の影響で、自分も美容師となり東京に出店もしたが、「一生の仕事とは思えなかった」という。憧れて出た都会の生活にも違和感を覚え、結婚を機に妻の田舎へ。そこで地域おこしを通して一次産業の重要性に目覚め、農業生産法人で農業に関わる基礎を5年あまり学んだ。

そして、地域活性化や地域再生に興味を持ち、利島のJAの求人に応募した。35歳、運命の利島との出会いに、家族3人での移住を決めた。

「江戸時代から続く椿の生産地で、長い間日本一を守ってきたというところにすごく引かれました。それ以外の利島の知識はゼロに近かったです。でも、現在は仕事がとても楽しいです。椿という稀有けうな環境は仕事としてやりがいがあります。椿産業を次世代につなげられる環境を整えるまで頑張りたい」

★柴田敦史さん(44)

同じくJAで働く柴田敦史さん(44)は、この島に住んで12年だ。大学卒業後、サラリーマンとして15年勤めたが、「仕事のストレスも大きく転職を考えていたところ、昼休みに転職雑誌をみていたら、たまたま利島の漁業組合を見つけました。軽い気持ちで応募したら受かってしまったので行こうかなって感じです」とのこと。

撮影=山本貴代
柴田さん

しばらく漁業の仕事に携わるが、教師をしている妻(島で出会った)の転勤で、いったん島を出て奥多摩へ。数年後、利島に戻ってきたとき今度はJAに就職したという。加藤さんと椿油の販促事業に日々力を注いでいる。一人っ子の息子はもうすぐ高校進学で島を出ていくけれど「私は一生ここでやっていくと思う」と話す。

★荻野了さん(41)

村役場の産業・環境課で働く荻野了さん(41)は、28歳で利島に移住した。島歴13年のベテランだ。家族は、島に移住してから島で出会った妻と子供2人。次男が昨年産まれたばかりだ。移住のきっかけについてはこう話す。

荻野さん(撮影=山本貴代)

「たまたまハローワークで見つけて履歴書を送って面接で初めて行きました。東京に300人しか住んでいない島があったのか、ということに興味が湧いて勢いだけで移住した感じです」

広告代理店で5年ほど働いた後、北海道や屋久島のツアーに一人で参加し、もっと自然を感じられる場所で働きたいと考えるようになった。そのときたまたま見つけたのが利島のJAの求人だったそうだ。しばらくJAで働いた後、現在の役場に転職した。

「全く知らない人だらけのところに飛び込んで生活できるものなのかということにも興味がありました。島暮らしの理想とかをあまり考えてなかったので、ギャップは感じたことがないというか、もともとないですね。何かあっても、あぁ利島ではこうなんだなぁとか、やっぱり酒強い人が多いなぁとか(笑)」