「一生、利島に住み続けます」昨夏に都内から移ってきた27歳独身女性

★清水恵介さん(40)
清水さん(撮影=山本貴代)

現在、利島の椿油工場で工場長を務める清水恵介さん(40)もIターンで利島に来て、もう14年目になる。東京・渋谷でITの専門学校に通っていたとき、利島出身の友達に誘われて遊びに来た。19歳だった。それから何度か通った後、26歳の時に利島で「1カ月住み込みのプール監視員のアルバイト」をやった。そして島から帰ろうとしたタイミングで、ある会社の人に声をかけられ、しばらく延長して住むことに。「だから、勢いで決めた感じですね」。

その後、決心して島に移住したそうだ。都会の生活には不満はなかったけれど満足も感じていなかったという。島では、海の仕事、山の仕事、椿油工場の仕事と経験してきて、自然の魅力=利島の魅力を肌で感じ、ここでの暮らしや仕事が、興味から少しずつ楽しさに変わっていったそうだ。今は、椿油でつくる石鹸の開発にも余念がない。

「緩やかな成長していくのが自分に合っていて、いまの生活には大満足です。働けるうちはずっとこの島に住み、椿産業を発展させ利島に貢献していきたいです」

★後藤由実さん(27)

JAの販売部で働く後藤由実さん(27)は、去年の7月に都内から島に移ってきた。「島に移住する決断をしたときに、何も捨てるものがない」と思ったのが一番の決め手だったという。27歳というと、周りの友人は結婚・出産し、社会経験も5年がたって仕事も軌道に乗る年齢だ。なぜ決断できたのか。

後藤さん(撮影=小塩真一)

「私は彼氏もいなかったし、居酒屋でアルバイトをしながら、転職先を探していました。だから何も捨てるものがないと思っていたんです。来てみたら、ファミレスもコンビニも、何にもなくて不便なことも多いけれど、不便なことを少しでも改善できるように今の職場で頑張りたいです。たぶん、一生、利島に住み続けると思います」

島民に必要不可欠なJAに就職できたことも、利島永住の決心の背景にあるようだ。

「とにかく人がいいんです。釣った魚をお裾分けしてくれたり、ご飯をつくって家に招待してくれたり、都会では味わえない環境がここにはあります。移住者を引き付けるものは人なんだと思います。島の人たちはみな温厚で、困ったときは助け合い、家族みたいです。利島は島が小さい分、結束が強く、若者もつながりを大切にする人が多いですね」

まだ一年もたっていないが、一生住み続けるという決意は固そうだ。

以上、インタビューした5人の共通点は、「明るくていい人」ということだ。みな、島との出会いは偶然だったというが、最終的に移住してきたのは、「島の引力」が強くて離れられなくなったからだろう。異口同音に話した「利島に貢献したい」という言葉が印象に残る。

若者が利島に引きつけられる理由は、以下の5つに整理できる。