「椿油」の生産量日本一を誇るTOKYO宝島

訪れる者を引き付ける要素は数えきれない。

実は、小さい島ながらその8割は椿(つばき)で覆われていて、植えられた椿は20万本。食用のほか、化粧品、食用、石鹸せっけんなどの原料としても用いられる植物性油脂「椿油」の生産量は日本一を誇る。

撮影=小塩真一
椿油の生産量は日本一

オーガニックの椿油は、ヨーロッパの「コスモス認証」(世界的に厳しい基準のオーガニック認証)を取っている。聞けば、300年の歴史があるという。日本庭園のように整えられた椿林は、2月ごろには当たり一面に花びらが散って幻想的だ。

また、島の近海にはイルカが数多くすみついており、夏にはイルカの間近で泳ぐこともできる。昨夏、島を訪れた筆者の目の前をイルカの大群が通り過ぎたときは「わあ~」と思わず声を上げてしまった。

利島はサクユリ(伊豆諸島に固有のユリ、カサブランカの原種)が有名だ。伊豆諸島に自生する固有種は利島が原産で、夏になるとあちこちで甘い香りを放つ。かつて存在した皇室の宮家・高松宮の献上花だったそうだ。ユリ根からつくられる焼酎は島の名産だ。

漁業も盛んだ。伊勢エビやアワビ、サザエがよく捕れる。黒潮にもまれた玉石(たまいし)の石垣は神々しい。海に日が沈む姿は涙が出そうにくらいに美しく、晴れた夜には満天の星空を楽しめる。

撮影=山本貴代
伊勢エビだけでなくアワビ、サザエもとれ、釣りファンも多い

遊びに行くといつも心が満たされる。そして思う。ここが、東京都の一部とはとても思えない、と。

20~40代の8割超は島外出身「利島は“Iターン”でできている」

自然の魅力にあふれた利島に関して、私が最も驚いた事実は、「島民322人のうち約半数がIターン」ということだ。このIターン比率は、20代~40代になるとさらに高くなる。

役場に調べてもらったところ、20代~40代の島民124人のうち、104人が島外からやってたIターンだった(令和2年1月現在・村役場調べ)。

教員や医者、警察など異動付きの人も込みの数値ではあるが、これはすごい。島に住む若者の8割以上が外からの移住者ということになる。全国の有人離島にこんな島はないのではないか。

彼らはなぜ、この島にたどり着いたのか。

遊びに行くのと、住むのとはわけが違う。いくらイルカがいようと椿が咲こうと、コンビニも映画館もカフェもない。そしてWi-Fi環境もいいとはいえない。普通、そんな「閉ざされた島」で生活しようとは思わないだろう。島には学校は中学までしかないので、子供たちは高校進学時に島を出てしまう。そして一度出るとほとんど戻らない。

ところが、彼らはやってきた。家族で来る人も多い。いったい何があったのか。