利島にIターン移住者が多い5つの理由

【理由1:人口300人というこぢんまり感がいい】

「島のサイズ感や顔と名前が一致できる人数を考えるとちょうど良い大きさ」(荻野さん)。島民の多くは港側に建つ学校付近に住んでおり、「仲間」という感覚が強い。

【理由2:島民は温かく、家族のように暮らしている】

「島民の皆さんは排他的ではありません」(柴田さん)
「人との距離が近く、他人なのに深くつながっている」(加藤さん)

Iターン者も分け隔てなく受け入れ、家族のように助け合って暮らす。子供も大人もすれ違えば挨拶あいさつを交わす。それがデフォルトの島なのだ。また、生まれた子供の子守役を決める「ポイ」という制度など、独自の風習が現在まで受け継がれている。

撮影=小塩真一
【理由3:子育て環境が最高】

目の前に海と山があり、子供を産み育てやすい。このご時世において子供が事件や事故に巻き込まれるリスクもほぼ0に近いのは親にとっても安心だろう。学校では、島民全員で運動会をしたり、放課後には誰でも参加できる部活があったり。中にはかけ持ちで入部する人もいるそうだ。

【理由4:通勤ストレスゼロ】

「集落は一つで、通勤時間はほぼ0に近く、通勤ストレスは全くない」(荻野さん)

仕事が忙しいときでも夕食は家族と食べて、その後仕事に戻ることも可能だ(車なら往復5分以内)。

【理由5:安定した、やりがいのある仕事がある】

漁業、椿産業、役場、学校、JA、民宿など、この島で仕事に困ることはないという。夏のプール監視員、勤労福祉会館の受付、給食の調理など島内のバイト代は平均1150円。JA関係は1200円だという。人手不足のため、時給は高めに設定されている。また島内で転職したり副業したりする人も多い。

2020年から年齢制限なし「ふるさとワーキングホリデー」も

島の引力はこの5つだけではない。

利島では、椿農家の高齢化(平均年齢69歳)で安定しない椿産業を支えるために、夏季の下草刈り作業の手伝いや椿の実の収穫作業で、学生ボランティアを毎年一定数募るなど「利島活性化活動」を継続し行っている。

撮影=小塩真一
椿油精油センター

2020年からは、年齢制限なしの「ふるさとワーキングホリデー」も始まるそうだ。これは東京では初めての試みだそうだ。夏の間ボランティアにきて、そのまま移住した人は、今年に入って早くも2人いるという。

ちなみにボランティア希望者は女性が多い。役場がシェアハウスを借りて受け入れたり、椿農家の自宅に泊まったりするそうだ。

島内には平地が少なく、住める土地は限られている。そのため今後も人口が大きく増えることはない。不動産屋も大工さんもいない。この先、しゃれた宿泊施設やカフェなどができることもなさそうだ。でも、そういう「ずっと素朴なまま」がきっといいのだろう。

都会から消えた何かがここには数多く残っていて、それが島外の人を引き付ける。そしてもともとの島の住人と外からの風が混ざり、新たなパワーを生む。

「東京宝島」のひとつである利島が、この先どう輝き変化していくのか。日本のこの先の暮らしのモデルになっていく気がしていて、かなり楽しみである。

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