「日本に来てよかった」とつくづく思う瞬間

ほかにも、ホテルオークラで見たこともない壮大な和の生け花に感動したり、日比谷にあるフラワーショップの高級で美しい花たちに見とれたり。デンマークでは何万円という値段で売られている花などまずないので、「こんな花を自分も作ってみたい」と憧れたものです。

日本で働き始めて時間がたってからも、デンマークとの仕事の量やスケールの違いを実感することは度々ありました。たとえば、ルイ・ヴィトンやシャネルといった高級なお店がデンマークにはないので、一緒に仕事ができるなどというチャンスはありません。また、フォーシーズンズホテルのような世界展開している高級ホテルも同様で、やはり一緒に仕事ができることはありません。

でも日本で頑張って働いていたら、こういった大きなブランドとの仕事の話がどんどん入ってくる。今でも私は、スケールの大きな仕事が入ってくる度に、日本のエンドレス・ポテンシャルと日本で働いていることへの喜びを感じますし、「日本に来てよかった」とつくづく思います。

東京・南青山のお店を任せてもらえたが

さて、川越で2年ほど頑張っていた頃、働いていたフラワーショップが東京進出のためブランドを作り、南青山にオフィスを構えることになりました。

はじめは本当にウェディングの打ち合わせをするスペースのみといった感じでしたが、私は東京でお店を開くチャンスと思い、「この空間を活用したい」とショップに切り替えることを考え、社長に思い切って提案しました。

社長は、「お金をかけずにやるなら」との条件付きでOKをくれ、運よく東京の南青山のお店を任せてもらえることになりました。

いよいよ都会のオシャレな場所でショップが開ける、と喜びはしましたが、本店は川越のままだったので、ウェディング用の花は川越で作って、それを週末に東京に運んで……という、川越と青山を頻繁に往復するハードな日々が続きます。

ショップのほうの仕事も張り切っていたので、朝一番で市場に行くことも多く、毎日寝不足状態。また、1週間働き詰めだったため、川越から青山に荷物を運んだ土曜日に目が回って倒れそうになってしまったこともありました。

あまりに楽しく、やりたくてしかたがなかった

ショップを任されるようになってしばらくたってから、私は骨董通りに新たなショップをオープンさせます。

それと同時期に、プライベートでも小さなフラワーショップをひっそり開いていました。六本木にあったデンマークレストラン「カフェ・デイジー」のオーナーと仲良くなり、レストランの階段の横のスペースを私のショップにさせてもらい、小さなアレンジメントを置いていたのです。