「ウチの子を立ち直らせたい」一心で、ひきこもり支援団体に300万円
その団体は全寮制で、ひきこもりやニートを預かって、社会復帰のためのカリキュラムや就労訓練を行っているということでした。ホームページには、ひきこもりから立ち直り、就職できたという事例が華々しく掲載されています。
生活費込みということもあり、費用は安くはありませんでした。しかし、それで息子が立ち直り、きちんと就職できれば、なにものにも代えがたい。両親はそう考え、息子を預けることにしました。
長男は初めこそ抵抗しましたが、元から自分の意思をはっきりと示す性格ではありません。不承不承ではありましたが、両親の説得を受け入れ、寮に入りました。
最初は1カ月の予定だったのが、「回復にはもう少し時間がかかる。せっかく改善に向かいつつあるので、今やめたらもったいない」と言われ、2度3度と期間を延長しました。そのたびに追加の費用が求められます。それでもご両親は、「これで立ち直ってくれれば」との一念で料金を支払いました。
結局、半年後に自宅に戻りましたが、以前と状況は変わらず、社会復帰はできませんでした。本人は、「両親から強制的に施設に入れられた」との思いがあり、親子の関係はかえってギクシャクしてしまいました。支払った費用は計300万円にもなっていました。
母親はこう嘆きます。
「大金を払ったにもかかわらず、まったく効果はありませんでした。高い授業料でした」
諦めない父「あそこはダメでしたが、ほかにも支援団体はあります」
しかし父親はまだあきらめていません。
「あそこはダメでしたが、ほかにも支援団体はあります。あとどれくらいお金をかけても大丈夫でしょうか」
今後の資金のシミュレーションを見て、可能な限りの資金をつぎ込みたいと考えているようでした。ここは少し冷静になる必要がありそうです。私はこうアドバイスしました。
「新たに資金を投入して、次の支援団体に入ることでご長男が仕事を再び働くことができ、自立した生活を送ることができれば素晴らしいです。でも、せっかくお金をかけてもうまくいくとは限りません。ご長男がこのままずっと働けないことを前提に資金計画を考えましょう。そうすると、今使える資金はそれほどありません」