お金をつぎ込み始めると見境がなくなる親たち
特にファイナンシャル・プランナーとして、③については念を押しています。お金をつぎ込み始めると見境がなくなります。「子供が立ち直ってくれれば解決する」とばかりに、先のことを考えられなくなってしまう親は少なくありません。親としては、どうしてもすぐに回復することを期待してしまいますが、ひきこもりの社会復帰は長期戦で考えたほうがよいでしょう。お子さんの自立を願いながらも、一歩引いた冷静な判断を忘れてはいけません。
ここまで説明すると、父親も冷静さを取り戻してきました。
「長男を立ち直らせることばかり考えて、焦っていたようです。本当は考えたくないのですが、“立ち直らない”場合のことも考えておかなければなりませんね」
「お子様の自立支援は、あわてず、あきらめずに、無理のない範囲で継続されてください」
長男が“立ち直らない”ことを前提に別の支援団体に入寮して200万円
長男が“立ち直らない”ことを前提にしたシミュレーションを作成することになりました。
父親の希望を入れて再度、支援団体の施設に入寮するとして、その費用は200万円を計上します。
<シミュレーションの前提条件>
・両親とも現在の平均余命まで生きるものとする。
・老齢厚生年金と老齢基礎年金の合計額は、父親が260万円、母親は100万円とする。
・両親の死去後に、自宅を売却(売却収入1000万円)し、一人暮らし用の中古マンションを購入(購入費用800万円)。
・現在の生活費は、住居費、自動車関連費、保険料などを除いて月額20万円。父親の死去で3割、母親の死去で4割減額。
・相続は、自宅も含めて法定相続割合で遺産分割。自宅は母親、そして長男が相続する。
その結果、両親が受け取る年金額は合計で8654万円となります。両親が亡くなる時点でおよそ3100万円の資産を残せばいいという結果になりました。