自社にとって最適なコラボ方法は何か

これは非常に興味深いオープンイノベーションのやり方と言えるでしょう。我々は他者と組む際に、1つのコラボ方法に固執しがちです。しかし竹内氏は「自社にとって最適なコラボ方法は何か」を、まず複数試して探ることにしたのです。

結果はどうなったか。まず、パターン3は自社資源を活かせず単価が高くなり、量産に及びませんでした。一方で、パターン1「外部デザイナーとの直接コラボ」は大成功を収めます。そこで誕生したのが、インテリアブランド「DRAW A LINE」でした。

「はじめ外部デザイナーの企画書を見たときは驚きました。色が黒いものや縦に使うなど、これまでに存在した商品に似ていたんです。しかし、デザイナーは突っ張り棒を『便利グッズ』ではなく、日常生活を豊かにする『インテリア商品』なんだと文脈を変える提案をしてきた。そこから、インテリア商材として、カラー展開を工夫し、凹凸のないデザインにして、空間づくりに役立つよう、照明や棚など組み合わせのパーツも増やしていきました」

加えて、パターン2の「社内にデザイナーを迎える」方法も成果をもたらします。竹内氏は結婚を機に仕事をやめていた女性デザイナーを採用。その方を中心に開発が進んだのが、社内で開発した「LABRICO」です。これは、突っ張り棒の特徴を活かしたDIYパーツシリーズで、市販の規格木材と組み合わせ、柱や棚、パーティションなどを自由につくれます。

この平安伸銅工業の事例は、「オープンイノベーションでは、自社に最適なやり方を試す必要がある」という示唆をもたらしてくれます。オープンイノベーションは協業先を見つけて終わりではありません。進め方に多様性を持たせ、最適な方法を見つけることが重要だと、新時代の「第二創業」リーダー竹内氏は教えてくれるのです。

▼今回のお手本
【平安伸銅工業】
1952年創業。ホームセンター、スーパーマーケット向けの収納用品を開発製造するほか、インテリア用品ブランド、賃貸住宅向けのDIYパーツシリーズを展開。「つっぱり棒研究所」などのウェブ媒体も運営中。
●本社所在地:大阪府大阪市西区江戸堀1丁目22-17
●売上高:30億9249万円(2019年6月期)
●従業員数:60名(2019年12月現在)
(構成=西川敦子)
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