値下げが裏目に出た可能性

ブランドイメージや新興国での消費拡大に支えられ、良品計画は2019年2月期まで4期続けて過去最高益を更新した。しかしこの期、中国の既存店売り上げは前年実績を下回った。その要因の一つとして、新興国の消費者などにとって無印良品のブランドイメージが徐々に変容した可能性は軽視できないだろう。

2018年以降、中国経済の減速は鮮明となった。中国の個人消費が鈍化する中で、良品計画はさらなる値下げを進めた。同社は、新興国にて“無印商品はやや割高なブランド”としてのイメージを払拭し、より身近な日用品としての印象を消費者に与えようとした。

それによって、良品計画は消費意欲を喚起しようとした。さらに、価格の引き下げのために良品計画はわが国でのモノづくりを見直し、アジア新興国など海外での化粧品や衣料ケースなどの生産を進めた。

結果的に、値下げと海外生産は、新興国の消費者にとって無印良品を手に入れることの喜びを低下させてしまった可能性がある。景気減速に伴って消費者が低価格品を需要するなら、良品計画の戦略は効果を発揮し、中国での売り上げも増加したはずだ。

国内の客単価も下落基調

しかし、実際にはそうならなかった。値下げなどによってブランドイメージが変化し、低価格帯の量産品との差別化が難しくなった可能性は過小評価すべきでないだろう。それに加え販管費の増加から、良品計画の2019年第3四半期の営業利益は前年同期比14.5%減の298億円だった。

国内では値下げの影響から客単価が下落基調にある。国内外において良品計画は人手不足の顕在化による人件費の増加に直面した。新しい基幹システムの構築、海外での出店強化のコストも増えた。

さらに、日韓関係の悪化や香港の情勢不安も重石だ。消費増税対応のための販促費用の増加、システムの不備に伴うサイトの利用停止の影響も重なり、2020年2月期の最終損益予想は下方修正された。先行きを懸念する市場参加者は徐々に増えているようだ。