沖縄県の観光客はこの数年急増し、観光収入も増えている。だが、県内の宿泊・飲食業や卸売・小売業の収入は増えていない。なぜ観光客の増加は沖縄経済に還元されないのか。沖縄在住の経営コンサルタント・築山大氏は「その理由は沖縄の『ザル経済』という構造にある」と指摘する――。

観光収入が地域を循環しないザル経済

観光客数はハワイを超え、観光収入も毎年最高値を更新している沖縄県の観光業は、県のリーディング産業に位置付けられていますが、本当の意味で地域振興につながっているとは言い難い状況が続いています。

現在、私は、沖縄在住の経営コンサルタントとして、さまざまな沖縄企業のお手伝いをしています。仕事で沖縄の経済や企業を分析していく中で見えた現状を、私はブログで発信してきました。今回、プレジデントオンライン編集部の求めに応じて、その内容に大幅に加筆してお届けします。

図表1は、沖縄県の観光収入と県民経済計算の増減をグラフにしたものです。観光収入が10年間で1.6倍に増加した一方で、県内の宿泊・飲食業や卸売・小売業が全く増えていないことが分かります。

この事実が浮き彫りにするのは、沖縄経済が、観光客の落としたお金を地域に還元して経済のサイクルを回せないぐらい貧弱な経済基盤である、つまりザル経済である、ということです。

その理由は、沖縄へ来た観光客の域内での消費活動を見るとよく分かります。

宿泊費(30%)インターナショナルや本土チェーンのホテルに宿泊
飲食費(22%)食材の県産品使用率は5割以下
土産買物費(22%)県産品売上比率は6割以下、外国人観光客の主な買物は本土チェーンのコンビニやドラッグストアで域内移動費(14%)観光客の6割がレンタカー利用、レンタカー会社の多くは本土チェーン
※参照:沖縄県観光産業実態調査