子どもが電車の中で本を読んでいるなんて

杭州在住の建築家の男性は大の日本好き。日本の隈研吾氏のファンで、日本各地にある隈氏の建築物を見て回ったり、神社仏閣を参拝したりすることに興味があるという40代の知的な富裕層です。これまで日本各地を見て回りました。

そんな「日本通」の彼は最近、日本の電車の中で「あること」を発見し、とても感動したと話してくれました。

「小説や図鑑など、ちょっと分厚い本を読んでいる子どもをよく見かけます」
「注意して見ていると、夕方の時間帯を中心に学校帰りの小学生の子どもが読書していますね。これは中国ではめったに見ない、とても珍しい光景です」

その男性はこういうと、スマホで撮った写真を私に見せてくれました。私立の小学校らしき紺色の制服を着たかわいい女の子3人が座席に並んで座り、じっと本を読んでいる写真。日本では、電車の中で読書している子どもや大人を見かけることは、別に珍しいことではないですが、その男性はやや興奮ぎみにこう続けました。

「日本ではこれが普通ですか? もしそうだったら、やはり日本はすごい。子どものときからこうやって読書の習慣を身につけるのはすばらしいことだと思います」

日本では本離れが叫ばれ、電車の中ではスマホを見ている人ばかり目につくように感じるが、中国からきた人からは、このように映るらしい。

中国では大人と一緒に通学するのが当たり前

この男性は続けます。

「それに、日本では子どもだけで遠方の学校にも通学していることにも私は驚きました。中国では絶対に考えられないことですから……」

中国の小学生は電車の中ではほとんど本を読みません。北京や上海などの大都市には地下鉄があり、地下鉄で学校に通う子どももいますが、移動時間に本を読む、という習慣はあまりないからです。家で読まないわけではないですが、家でも勉強に追いまくられているので、好きな小説や図鑑を読む時間的な余裕はあまりないのです。

そして、中国の大都市では、子どもは、たいてい両親か祖父母、またはお手伝いさんと一緒に通学します。誘拐事件が多く、一人で通学するのは危険だからです。親のクルマに乗って通学することも珍しくありません。

午後3時~4時ごろ、小中学校の正門前に家族やお手伝いさんが立ち、子どもの帰りを待っているところをよく見かけますし、正門の近くには、ずらっと家族のクルマが縦列駐車しています。

そのような環境に住んでいるため、日本では子どもが一人で電車に乗って通学している、というだけでも、中国人にとってはかなりの驚き。「日本がいかに安全で平和な国であるかがわかる」と男性は感心していました。また、電車ではありませんが、小学生が集団登校したり、幼稚園生が保育士さんと一緒に散歩して歩く姿も「中国では見たことがない!」と感じて、新鮮に映るようです。