部下の指導方法は部下に聞けばいい

1945年、奈良県生まれ。戦後の経済成長とともに高等教育の大衆化が進んだ世代だが、中井氏は中学を出るとすぐ兵庫県尼崎市の乾物屋へ丁稚奉公に出た。その後、洋食レストランでシェフの修業をしたあと、73年に大阪・千日前にお好み焼きの専門店「千房」を開き、国内外に60店舗を展開するまでに育て上げた。実践に基づいた教育論・人間論を展開し、人材教育などをテーマにした講演は多くの聴衆を引き付けている。

ある日、両隣の店が夕方6時になって店じまいをするのを見て、同じタイミングで店先を片付けはじめると、大将から「まだ6時やないか。そんなにやる気がないなら帰れ!」とどやされました。ならばと、もう少し遅くまで開いていると「なにボーッとしてる。もう6時やないか、片付けろ!」。どちらにしても、叱られるのです。

涙がこぼれました。しかし解決するのは簡単です。直接、大将に聞けばいい。6時になったところで相談すると「今日は暇だからそろそろ片付けようか」と、今度はやさしい声音でいってくれました。

何かわからないことがあったら、本人に直接聞く。これが大事だということに気がつきました。そうすれば解答そのものでなくてもヒントはくれる。

閉店時間については、大将に聞き続けているうちに呼吸を呑み込むことができ、いちいち聞かなくても自分でわかるようになりました。

これは部下に対してもまったく同じです。部下について悩みがあれば、本人抜きであれこれ考えるよりも、本人にじかに聞きにいけばいいのです。

「おまえ、どないしたら真面目になれんの?」

もちろん詰問調で聞いてはいけません。そのときの自分の顔や口調が相手を不愉快にさせるのか、元気にさせるのか。それを常に考えながら接しなければいけないと思います。人の心は、顔の表情や態度、声の音色から、相手へ瞬時に伝わってしまうのです。

タクシーに乗るとき、運転手さんにいうことがあります。

「嘘でもいいから、今度乗るお客さんに『景気、ようなりましたなあ』といってくださいよ」

客は「そんなことあらへん」と否定するでしょう。でも「乗ってくるお客さんはみなさん、そういってはります」といわれれば、「うちがよくなっていないのはなぜだろう?」と考え始めるでしょう。つまり外部要因ではなく内部要因に目がいくようになるのです。

「自分は、やるべきことをきちっとやっているだろうか?」

接し方しだいで、このように思わせることはできるのです。部下との関係も同じだと思います。