低価格居酒屋に転換することで、客単価では約36%落ちるが、客数はそれまでより平均150%、店舗によっては200%を超えた。売り上げも転換前より約20%アップした。
「お金を出す以上、お客様目線ではじものなら価値は同じ。飲食店だから高く、物販店だから安いという言い訳は関係ない。例えば、近所のスーパーなら300円弱で買えるビールが、飲食店で飲むと500円。今までの価格設定は、我々の身勝手にすぎない。居酒屋を水商売ではなく、産業化するためには、お客様目線で価格破壊をしなきゃいけない」(平林社長)
ファミレスやファストフードのように1日の大半を営業時間とするわけにはいかない居酒屋のこれまでの常識では、いかに客単価を上げるかを考え、そのために料理やサービスを高級化してきた。
しかし平林社長のモットーは「私たちは居酒屋業界のサイゼリヤを目指す」だ。
多くの食材がレンジで加熱して盛りつけるだけの加工済み状態で納品される。揚げ物は衣付きで揚げるだけ。串物は機械にセットして焼くだけ。そのため130から180席の店舗で、キッチンは3人から5人だけだ。
「居酒屋だけが仕込み作業にこだわっているが、ファミレスとかファストフードには、開店も閉店も休憩もない」
仕込みレスでパート化すれば、ムダなコストをかけずに、より低価格が実現できる。
「均一居酒屋は価格を下げて、その分、量を減らしている、という先入観を絶対否定しろと、社内では話している。『鳥貴族』さんと同じ量を2本出すように変えて半年になるけど、今度は3本にすることに決めた。やきそばだって量に驚いてくれるはず。価格訴求と見た目の明確な違いが、お客様にとって大切です」(平林社長)
※すべて雑誌掲載当時
(小原孝博=撮影 ライヴ・アート=図版作成)