名指しされた「鳥貴族」(大倉忠司社長)は、本社を大阪に置く全品280円均一の焼き鳥屋だ。社名と同じ「鳥貴族」だけで179店。均一居酒屋ブームの追い風を受け、4期連続で売り上げ前年比大幅増の高成長を続けている。
鶏料理に限定しているためフードメニューは居酒屋より少なく約70種類。ドリンクを入れても130種類しかない。
同社が取り扱う鶏肉は、すべて国産だ。スタッフが産地へ出向き、鶏肉業者と直接取引をして仕入れている。そして、各店舗で串打ちをして提供するため、原価率は35%と高い。だが、それが同社の企業努力だと、大倉社長は答える。
「ナショナルチェーンは、我々のような非効率的なことは絶対真似できない。流行とか時流に左右されない居酒屋の中の生活必需店として確立させたい」
メニューを絞り、鶏肉にこだわることで、大きなリスクを抱え込むことはないのだろうか。例年のように発生していた鳥インフルエンザ。売り上げはどうなったのだろう。
「実は鳥貴族の主力の顧客層である若い人たちは、あまりそういったニュースに興味がないようです。鳥インフルエンザが報道されていたときもほとんど売り上げは変わらなかった」
大倉社長が目指すのは、居酒屋業界のケンタッキーフライドチキン(KFC)だ。
「KFCが使う鶏肉の量は、国内の供給量の7%を占めるんです。ですから、KFCがキャンペーンをすると市場の価格が変動する。パートによっては1%を超えている鶏肉のシェアをどんどん大きくしていきたい」
同社の280円の均一料金は、このボリュームディスカウントが支えている。同社の鶏肉の仕入れ価格は、たった一軒で始めた創業当時と比較すると、同じ品質のものが約40%安く買えるようになったという。
179店の鳥貴族を抱える同社だが、その出店規模と比較して知名度は低い。居酒屋チェーンがひしめく都心の駅前一等地ではなく、周辺地域に展開しているからだ。
三光MFが徹底した好立地にこだわるのと対照的なのはフードコストの高さゆえだろう。満を持して進出した「渋谷井の頭通り店」は、階段の狭いビルの3階にある。同社では、家賃比率を売り上げの8%以内に抑えている。
この不況による店舗賃料の下落は、同社にとっては追い風となっている。この秋には、池袋に150席の店をオープンする。席数平均70の同社にとって、それは最大規模の挑戦となる。
それでも接客対応は、従来と同じ。均一居酒屋の定番である機械によるオーダーシステムは採用しない。
「タッチパネルは従業員が全テーブルについて、一斉にオーダーを聞くようなものですから、厨房はパンクしてしまいます。お客様にも迷惑がかかる」
※すべて雑誌掲載当時