出前講座を調べてみるのもおすすめ

それでも、直接親に向かって“相続のために家族会議を開きましょう!”とは言い出しにくいものだ。そこで、まずは親御さんがお住まいの地域の出前講座を調べてみてはどうだろうか。お金の話の「出前講座」。開催予定がないという返事が返ってきたら、

「ある地域では、実際に行われているように聞いたのだが、この地域ではやってもらえないのだろうか」

と依頼をしてみるのだ。

行政は、なかなか新しいことに手を染めようとしない。しかし、何件も同じ問い合わせや要望があれば動かざるをえなくなる。市民の声を活かすことこそが行政の仕事だからだ。

地域の人たちの役に立つ出前講座は各地で開催されているようだ。その中で、“相続税0円でももめることが心配な人のための講座”というものがあってもよいと思う。その講座に参加すれば、相続税は0円だけど、相続でもめたらどうしようと思っているのは自分だけではないということに気づけるだろう。

相続は人生の想いを繋ぐ作業

「天国からのラブレター」という落語がある。

ある寿司屋のおやじが亡くなったのだが、三途の川を渡る前に案内人に出会う。おやじは自分では財産などないと思っていたのだが、子どもたちが財産をどれくらいもらうかでけんかをしているのが天国から見て取れた。

おやじは案内人に勧められ、子どもたちに手紙を書く。

天国から届いた手紙を読んだ子どもたちは、家族との思い出を懐かしみ仲直りをした。そして、おやじが手紙に書いた通りに財産を分けたというような内容だったと記憶している。

ストーリーもよくできていたし、そのときのはなし家さんがうまかった。筆者はこの落語を聞いて、涙してしまった。全国いろんなところで演じられているようなので、親子でこの落語を聞きに行くというのもひとつの策だろう。

都会で働くサラリーマンの方が、実家に帰り、昔の家族が顔を合わせるのは、年末年始かお盆くらいだろう。お酒が入り、昔話に花が咲く前に、相続税0円でももめない相続をするための話を、やんわりと切り出してみてはどうだろうか。

相続は単にお金を分けるものではない。その人が歩んできた人生の想いをつなぐ作業なのだ。じっくりと時間をかけて、家族で話をすることをお勧めしたい。

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