店頭で揚げるから、ジューシーになる

最初から売れた理由は、やはりおいしいからだ。基本のレシピと価格は、なんと今でも変わっていない。

ニチレイフーズによると「国産鶏ムネ肉が本来持つ肉のおいしさにこだわっている」という。そして最大の味のポイントは、店内で揚げるひと手間につきる。

「コンビニエンスストアのファストフードは忙しい消費者に手早く商品をご提供しないといけないため、短時間調理が求められます。そのため工場で商品を完全に加熱してしまうのが一般的ですが、からあげクンは鶏肉のジューシーさを保つためにお店で最終調理をします。お店で丁寧に調理してくださっているおかげで、鶏肉の旨みが凝縮したから揚げができるのです」(太田)

今はどのチェーンでもフライドメニューは定番だが、パイオニアであるからあげクンを「調理する」手間を惜しまなかった加盟店の努力あってのヒットだ。利益を生む“妖精”には違いないが、売れすぎた時は大変だったことだろう。

さらに「(からあげクンが)ムネ肉だからこそ、成長できた」と、友永は分析する。

「味の濃いモモ肉と違い、ムネ肉は繊細な味。だから味つけしやすいんです。からあげクンがいろんなフレーバーにチャレンジし、いつの時代もお客さまにおいしさと楽しさを提供できてきたからロングセラーになりえたと思います」

「チーズ」は定番化するまで10年かかった

第一号のレギュラーが出た後、88年にレッド、94年にチーズを発売。安定した人気を誇る3品を定番化し、その他、限定販売の「第4フレーバー」を出し続けている。フレーバー開発には、いくつものターニングポイントがあった。ざっくり記録したい。

〈バージョン1〉
90~2000年初め……試行錯誤してレギュラー、レッド、チーズを基本商品に決定。チーズは何度か発売したものの、定番化するまで10年かかった。

〈バージョン2〉
2005年……地域限定フレーバー販売開始。「愛・地球博」の開催に合わせ、愛知県で手羽先味を販売。

〈バージョン3〉
2007年……映画やアニメなどとのコラボ作戦を解禁。初めて映画『スパイダーマンⅡ』とタイアップし、刺激的なブラックペッパー風味に。

〈バージョン4〉
2015年……1.4倍大きい「でからあげクン」を発売。以降、不定期で販売。

〈バージョン5〉
2019年……新しい技術で具材を入れられるように。5月に「あらびきペッパーマヨ味」を発売。以降、不定期で販売。